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Ⅵ 凱旋ーⅴ

 ハーシェルはガゼルの指揮下に入り、街の復興に手を尽くしてくれていると、サンドラから聞いていた。彼らは毎日、三時間程度の睡眠でもって動き続けている。ユリゼラはすでに一度倒れてしまい、迷惑をかけた。彼らのような体力を持てることが、心から羨ましい。


「そういえば……なんで、わかったんだ?」

 ユリゼラの手を取り、足許が安全な場所に着地するのを待って、ハーシェルが疑問を口にした。


「新聞です」

「新聞?」


「毎年、新年に王室の皆様のご様子が似顔絵付きで報道されます。父もどこかで見たようなと申しておりましたし、思い出して以前の新聞を確認致しました」


「……すごい記憶力だな」

 目を見開いたハーシェルに、ユリゼラはうつむく。


「誰にも、漏らしてはおりません。どういったご事情でこのようなところまでお越しかは存じませんが……」


「配慮してくれて、感謝する」


 いつも少し偉そうで、少しぞんざいな話し方。

 王族らしくないけれど、威厳だけは損なわれていないそれに、ユリゼラは切なくなった。


 初めて、恋をした。


 素性のわからない人だったが、体の弱いユリゼラに変に気を遣わず、いろんな話をしてくれた。女だからという理由で、会話の内容が手加減されるようなこともなかった。彼と話をする時間が、ユリゼラはただただ、楽しかった。


 中央からガゼルたちが来て、彼は悩んでいる様子もあったが、今は吹っ切れたような雰囲気をしていて。


(お帰りに)

(なるのね)


 細かな事情はわからない。けれど、王の乱心の噂は、ここにも届いている。


 ハーシェルが王子だとわかってから、この土地に留まる人ではないことは、わかっていた。同時に自分の身分では、彼に想いを抱くだけ、無駄なことも。


「その……あなたに、話があったんだ」

「お話、ですか?」


 少し目を泳がせ、言いにくそうなハーシェルを、ユリゼラは黙って見つめる。


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