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Ⅴ ハーシェルーⅹⅵ

 サンドラのことがわからないとはどういうことだと、ハーシェルはうつむいた横顔を凝視する。


「ずいぶんと、お痩せになっていてな……わたしを見るなりよろよろと近づいて来られて……『ミレイア、わたしはもう、楽になりたい』と、わたしに(すが)って、お泣きになったんだ」


 ハーシェルは、泣きたい思いで奥歯を噛みしめる。


 ミレイアは、サンドラの母の名前だ。


「母上は、『兄様はときどき思い詰めるから、笑い飛ばしてあげるのがいいのよ』と言って笑ったことがある。伯父上はそうして欲しかったのかもしれない。でも、わたしは、母上のようには出来なかった」


 一言一言を区切るように話すサンドラの横顔も、泣きたいのをこらえているようで。


「伯父上も、もともとは姉上をご病気で亡くされたことが理由で、その地位に就かれたそうだな。わたしは小さかったから、界王として立たれた頃のことはよく覚えていないんだが。テラ様に聞いたら、陛下は当時、亡くなられた姉上と比べられることを悩んでいらしたそうだ」


 テラは、王都に住まうクレイセスの母だ。ミレイアの姉でもある。

 サンドラは恐らく、テラにその話をしたのだろう。


 悩んでいた話は、ハーシェルも少しだけ、母から聞いたことがあった。けれど自分は、父が悩む理由を理解出来なかったのを覚えている。


 父は、民を虐げたりしていない。城下に出れば活気があって、経済も回っていた。民が生活に困ることがないなら、それは「いい王様」なのだと、幼かったハーシェルは漠然と思っていたのだ。


 そして、執政にあまり関わって来なかった自分は、父の立場で、目線で、ものを考えたことがなかった。


「楽にして差し上げたいと、思ったんだ」


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