表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/97

Ⅴ ハーシェルーⅻ

「サンドラにも、話があるのか?」

「なんのだ」

「王位の」


「……シンは、そんなことまで話したのか。意外におしゃべりだな、あいつ」

 渋面を作るサンドラに、ハーシェルは訊く。


「実際、どうなってるんだ。現状は」


「フィルセインを支持しない貴族は、アリアロス家の正当性を主張している。クレイセスが騎士団長として手腕を見せていることもあって、余計にな。だが、当の本人であるクレイセスは、王位に興味がない。そもそも、ハーシェルがどこかで立つと信じている」


「兄上も姉上も……本当に、亡くなったのか」

「ああ。……わたしの、母も」

 サンドラの言葉に、ハーシェルは彼女を凝視する。


「フィルセインは恐らく、王位に近い者を排除しているんだろう。まさか母上にまで手が及ぶとは思っていなかった。村の祭りに参加した帰りに殺されたと、父上からの手紙にあった」


「すまない……」

「お前が謝る必要はない。ついでに言っておくが、わたしも王位には興味がない。縛られることが嫌でこんな現状なのに、王様業など務まる訳がないだろう。わたしを擁立(ようりつ)したい人間は、野心があるんだと思う。王冠が血の約束なら、王は傀儡(かいらい)でいい、実権を握りたいと、そういう話だ」


 静かにそう言ったサンドラに、ハーシェルは息苦しささえ覚えてうなだれる。


 サンドラの故郷はここよりもずっとずっと北だ。この訃報(ふほう)がサンドラの手に届くまで、どれほどの日数が経っていただろう。


 サンドラの母は、ハーシェルにとっては叔母にあたる。あまり会ったことはないが、父によれば自由奔放な性格で、サンドラの父であるレフレヴィー伯爵に想いを寄せて、押しかけるように嫁いだのだとか。


 恋愛の経緯はともかく、自由で奔放な様子は、サンドラにしっかりと受け継がれていると思う。


「お前が、生きていて良かった」

 ふっと笑ったサンドラに、ハーシェルは顔を上げる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ