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Ⅴ ハーシェルーⅹ

 二人が離脱し、ハーシェルは次の場所へと移動する。建物から這いずり出そうともがいている者、瓦礫の中から叫んでいる者、とにかく生存者を片っ端から助け出す。そのうち火事もあったのか、焦げ臭い匂いまで漂い始めた。


 しかし目の前で手を伸ばす人がいるのに、火事の手伝いになど行ける訳もなく、ハーシェルは今ある人手で目の前の命に全力で当たった。



 夕方になる頃には、一万人以上の生存者が確認された。救護所には何千人という重傷者が運び込まれ、転がっている。


 シンはユリゼラを送り届けて戻って来たが、その後も重傷者を救護所へ運ぶ役目を果たし、同時に伝令も務めていた。それによると、ガゼルがこの土地のセルシア院の者たちも含めて指揮を執り、この街の半分ほどは救助が叶っているという。


「ハーシェル」

 すっかり暗くなった頃、サンドラの声に顔を上げた。


「お前、少し休め。ユリゼラ殿が心配していた。不休で当たっていては、ハーシェル様が潰れてしまいますってな」

「……そうか」


 同じく作業に当たっている者には、適当に休憩時間を与えながら作業をしていたが、作業をしながら指示を仰ぐ声などに対応していると、自分が休む暇をうまく見つけられなかった。


 ハーシェルは暗くなった夜空を見上げ、今の作業が終わったら皆救護所へ向かうよう指示する。そこで食事の配給も行われているはずだ。



「いつばれたんだ?」

 一通り指示するのを待って差し出された水を一気に(あお)り、深く息をつく。

 ただのぬるい水が、やたらとおいしく感じられた。


「……いつわかったか、聞きたいのは俺だ」

 どかりと座ると、サンドラも隣に腰をおろす。少し気遣うような視線に、ハーシェルはどうした、と少しのけぞる。


「いや……シンから、聞いたんだろう。すまなかった」


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