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Ⅴ ハーシェルーⅷ

 頭を下げた料理長に、ユリゼラは「女官長」と視線を向ける。膝立ちのまま放心していた年嵩(としかさ)の女が、はっとしたようにユリゼラを見上げた。


「しっかりして。城下にいる家族が心配なのは皆同じよ。今は私たちが出来ることをするの」

 肘を取り、ユリゼラは立ち上がらせる。


「これから城下の救護に向かいます。あなたは馬車も操れたわね? 私は男手を連れて先に城下へ行く。あなたはここからありったけの医療品や毛布を集めて私のところへ運んで。噴水のある広場に救護所を設けるわ。ほかにも要りそうな物があれば屋敷の中から持ち出して構わない。それと、この中で休むのは危険だから、庭のどこかにここの皆が休めるような場所を用意しておいて。それも、私たちを特別扱いしなくていいわ」


「は、はい、かしこまりました」

 返事に頬笑むと、ユリゼラはハーシェルを振り返る。


「一緒に来ていただけますか」

「もちろんだ」

 隣でシンも首肯して、動き出したユリゼラに従った。



 城下は、石造りの建物が半分ほど残っているほかは、ほとんどが倒壊していた。至るところで悲鳴や泣き声が聞こえ、どこから手をつけていいやらわからない状況だ。しかしユリゼラは、最初に人命救助が行われている場所で、迷わず馬から降りて手を貸し、簡易な木造の店の下敷きになった夫婦を助け出す。そうしていつの間に持ち出したのか、軽い怪我には膏薬を塗り、骨折したと思しき男には添え木をして、馬に乗せた。


 最後に、「噴水のある広場」に救護所を設けると言って回りながら歩いてくれと願うと、夫婦は蒼白になりながらも頷き、「どうかお嬢様も無理をなさらず」と頭を下げて去って行った。


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