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Ⅴ ハーシェルーⅱ

「そこでだ。フィルセインは、ユリゼラ殿を擁立(ようりつ)して、意のままになるセルシアとして仕立てようとしているんじゃないか?」


 サンドラの推測に、ハーシェルはまさか、と笑おうとして、不意にそれは正しいような気にもなった。フィルセインは確かに女好きだが、ユリゼラは彼の範疇(はんちゅう)からすればやや若すぎる。そして、好みからも、外れる。あれは清楚な花を物足りなく思っている男だ。


「セルシアが姿を消した理由はまだわからないが……そう考えると、フィルセインがユリゼラ殿に固執する理由も納得がいくんだ」


 サンドラの真剣な眼差しに、ハーシェルは眉根を寄せる。

 確かに彼女なら、大地に選ばれてもおかしくはなさそうだと自然に思えた。


「一昨日から、光響(こうきょう)が、起きてない」

 ガゼルの言葉に、ハーシェルがはっとする。


 日が最も高くなる時、すべての植物は虹色に輝く。確かに、日常の当たり前の光景を、目にしていない。


「でも彼女の歌は、狭い範囲だが、それを起こせるようだ。大地の声も、ちゃんと聞こえるらしいしな」


 セルシアの枝(セルージャンノルディ)を差し置いて、祭の歌を歌うだけの実力はあるという訳だ。ならばなおのこと、ユリゼラを奪われると厄介なことになる。


「祭りの前に、なんとか片付けたいとは思っている」

「ああ。あいつらの動きは、つかめてるのか?」


「ユリゼラ殿が屋敷から出てくるのを待って、潜んでいる奴らがいる。屋敷の警護に行った連中がそれと思しき奴を目撃しているし、仕留めた一人は無理にでもユリゼラ殿を連れ去る気でいた」


「そうか。俺、うかうかしてらんないな」

「らんないぞ」

 サンドラが笑い、ひらひらと手を振る。


「さっさと戻って警護に励め。こちらが動くときにはなんらかの形でちゃんと知らせるから」

「ああ……頼む」

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