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Ⅴ ハーシェルーⅰ

「よお。今日はゆっくりだな」

「ああ。お嬢が朝から書斎に()もってたからな。朝食の時間がずれたんだ」


 頭を突き合わせて作戦を練り上げていたガゼルとサンドラが顔を上げ、ハーシェルに笑いかける。


「綺麗だったなー、ユリゼラ殿」

「ああ。王都でもなかなかお目に掛かれないほどの美人だな」

 サンドラとガゼルが言い、「で、進展はないのか」と目が物語る。


「昨日集められてた中の何人かは、見合いの相手だろう。あの容姿なら引く手数多(あまた)だろうし、近いうちに誰かとまとまるんじゃないか」

 二人が期待するような話はまったくないことから、ハーシェルは事実と推測だけを伝える。


「それでお前は、淋しくない訳」

 サンドラの怪訝そうな視線に、鼻で笑いながらハーシェルは応えて話の矛先(ほこさき)を逸らした。


「淋しいも何も。なんにもない。で、現状どうなんだ」

「集結してる場所はここだ。人員補充がされたのか、若干増えてる」


 ガゼルは話を切り上げ、目の前の地図を指で指し示す。


「収穫祭では毎年ユリゼラ殿が歌うそうだな。狙われるとしたらそこか」

「そうなのか? 収穫祭のそれは、セルシアの枝(セルージャンノルディ)の役目じゃないのか」

 初めて聞く話に、サンドラが説明する。


「先程、ここの騎士に聞いたんだが。彼女には強い力があるらしいな。そもそも、ここにセルシアの枝(セルージャンノルディ)は派遣されていない。領民もユリゼラ殿が出てきたほうが華やかで喜ぶし、もう十年前から、彼女が祈りの歌を捧げてるんだそうだ」


「へえ……それはまた、警護が難しい形だな」


 商隊にいたときでも噂にはなっていたが、ユリゼラにそれほどの力があるとは知らなかった。しかし、彼女がそういった形で祈りを捧げる姿を想像するのは、難くない。むしろ、領民が喜ぶというのが容易に納得できるほど、似合うなと思ってしまう。


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