表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/97

Ⅳ ユリゼラーⅲ

「さあ。そろそろ、お戻りになったほうがいい」

 ユリゼラは素直に頷き、中へと戻って行く。


(俺、こんなに馬鹿だったかな)


 想いを寄せたところで、それを告げることも許されないのに。


 王子のままだったら、出会えなかった。男爵令嬢では、(めと)ることも困難だ。理由ならいくらでも思いつく。


 ……本来の立場なら。


(今のほうが)

(もっと難しいのに)


 男爵の末の姫。しかし姉姫は商人に嫁いだものもいる。なら、家督とは関係のないユリゼラの嫁ぐ先は、「ダリ」なら許されるのだろうか。


 ぼんやりとそんなことを考え、ハーシェルは自嘲した。


(どうなるかわからない)


 ハーシェル自身が、いつ王の手先に殺されるとも限らないのだ。ユリゼラを愛しいと思うのならなおのこと、巻き込むことをしてはならない。


 広間でガゼルやサンドラと話をしているユリゼラは楽しそうで……自分はその中に入っていく資格が失われていることを、ハーシェルは痛感した。


*◇*◇*◇*


(きっと、そう)

 ユリゼラは目覚めて、ぼんやりと外を見ながら昨夜のことを思った。


 あんなに華々しいパーティーは初めてで、誰もが同じに見えた多くの貴族たちと機械的に挨拶をこなし、明るく煌びやかな空間で多くを過ごしたのに、はっきりと胸に刻まれたのは、中庭の時間だった。遠くから聞こえる曲に合わせて踊った、星明かりに照らされたそれは、一番幸せな時間だった。


 優しい瞳に見つめられて、ユリゼラは〝ときめいて〟いた。

 そして、思い出したのだ。彼を、「何で」見たのかを。


 ベッドから起き出し、着替えて書斎に向かう。


 気の所為であって欲しいと思いながら、ダリの所作は、教養は、知識は、深すぎた。もちろん、平民の中にも優秀な者はいる。しかし。


 ()じられた新聞をめくり、ユリゼラの指は震えた。


「────っ」

 ハーシェル・ハリア=レア・ミネルウァ。


「やっぱり……」

 毎年、王の生誕祭には五人の子供たちの消息が載る。今年は生誕祭そのものが行われておらず、王子、王女の様子はわからない。


 これは去年のものだが、ユリゼラはその肖像を、ゆっくりと指で撫でた。


 彼は、王の末子で、第四王子。

「ハーシェル、王子……」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ