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Ⅳ ユリゼラーⅱ

「大丈夫です。これほどのお客様とお話することが初めてで……正直、うまく話せているかも自信がなくて」


「評判は良いですよ。ここにいると、噂話は良く聞こえる」

 笑うと、ユリゼラもはにかむように微笑んだ。


 ふと、この中の誰かといずれ結婚するのだろうなと、ハーシェルはユリゼラを見ながら思った。それは、わずかな痛みを伴って。


「ダリ様?」

 自分を真っ直ぐに見つめる瞳は美しく、真珠細工の耳飾りが、ユリゼラの清楚な美しさをまた引き立てている。


「あ……」

 流れてきた曲に、ユリゼラが首を向ける。


 今夜、ガゼルたちがいるからこその選曲であろうが、勇壮な印象を与えるワルツ「騎士を称える円舞曲」だ。ハーシェルは何事かの式典につけてこの曲を耳にし、礼儀として、約束が取り付けられている姫の手を取ってきた。


「お好きですか?」

「ええ、この曲は」

 踊り始めた広間を眺めながら、ユリゼラが微笑む。


「では」

 ハーシェルはくすっと笑い、手を差し出す。


「踊っていただけますか?」

 ハーシェルの行為に驚いていたユリゼラが、じっと手を見つめ、ハーシェルを見上げる。そうして、本当に嬉しそうに、その華奢な手をハーシェルに載せた。


「喜んで」


 難易度の高い曲だが、ユリゼラのステップは軽く、優雅だ。


 王子様に手を取られて、華やかな舞踏会に出席してみたいと言っていた、先日の会話を思い出す。こんな格好でなく、身分も明かせたなら、彼女の夢を叶えてやれたところだったのに。


「素敵! ダリ様はダンスまで上手でいらしたのね!」

 珍しく興奮したようにそう言うユリゼラを、ハーシェルは素直に可愛いと思った。


 星明かりにキラキラと輝く瞳も、見つめれば吸い込まれそうになる。深入りはしないと決めていたのに、自分の気持ちが危ういところまで来ていることを自覚した。


 二人だけの中庭で、ダンスが終わる。


「ありがとう、ございます」

 上気した頬のユリゼラは(あで)やかで、華やいだ声が礼を述べた。


 ハーシェルは目を細め、ただ微笑む。口を(ひら)けば、変なことを言ってしまいそうで。


「とても……とても楽しかったですわ」

 一所懸命にそう言うユリゼラに、ハーシェルは自然とその頬に手を伸ばしかけ、はっとして言った。


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