表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/97

Ⅲ 王都の消息ーⅷ

 護衛を始めてユリゼラとも話すようになり、彼女の聡明さは噂に(たが)わないことを認めていた。この世界の現状を、これほどきちんと認識出来ている姫は、世界広しといえどもユリゼラだけではないかと思える。そしてこの土地のこと、取引先のこと、近隣の領地のこと、その内情。女性にありがちな服飾の関係など、話のきっかけ程度にしか話さない。それがまた、ハーシェルには心地良かった。


「ああ。今年は綺麗に実が付いたのね」

「あれは?」


「王都にまでは運べないのでご存知ないかもしれませんわね。ヨナの実と言いますの。花が旺盛に咲くのですけど、実がそれほどならなくて。でも、瑞々(みずみず)しくてとても甘いのです。そうですわね、味は少し桃と似ているかもしれません」


 ユリゼラが見上げる先には、ワインのような色の真ん丸な実があった。


「召し上がっていただきたいけれど、熟すまでにはもう少し時間が必要ですわ」


「それは残念。ここに来て、王都では見られなかった食べ物がたくさんあるのが、ひとつの楽しみです」


「ダリ様は王都から出たのは、初めてでいらっしゃるの?」

「ええ。王都の両隣、くらいはありますが、こんなに遠くまで来たのは初めてですね。思い切って飛び出してみて良かった」


「旅は危険なものだと聞いているのですけど、あなたほどの腕があれば心配も要らないのでしょうね。私も、いつか遠くまで行ってみたいわ」


 ユリゼラの瞳が夢を見るように輝き、ハーシェルは「王都にはご興味がないのですか」と聞いていみる。


「もちろん王都にだって行ってみたいし、宮廷にだってあがってみたい。王子様に手を取られて、華やかな空気の舞踏会にだって出てみたいという、夢もありますわ」


 そこは年頃の女性らしい夢だろう。


「ユリゼラ殿なら、あっという間に宮廷の花として社交界の人気者になりますよ。王都には多くの姫がおいでだが、ユリゼラ殿ほど美しくて賢い姫はいない」


「あら。ダリ様まで上手なことを仰ってくださるのね」

 くすくす笑うユリゼラは、ハーシェルの言葉を完全に社交辞令としてとらえている。それが本当だと伝えたい気持ちもあるが、ムキになるのもおかしな話だ。


「たとえばサンドラ副官が男だったら、手を取られてみたい?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ