表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/97

Ⅲ 王都の消息ーⅶ

「女性ですのに、副官におなりになるほどの実力をお持ちなんですか?」

「ええ。あいつなら、そのうち長官にもなれるのでは。腕はかなりのものです」


 彼女にまだ一度も勝てていないことは、この際伏せておく。


「で、姫の今日のご予定は」

「あ……気分も良くなったので、少し散策をと思っていたのですけれど。しばらくは館の中でおとなしくしておきますわ」


「構いませんよ。屋敷のまわり程度でしたら。こちらも警備が強化されていることですしね」

「では、支度をして参りますわ。少しお待ちになって」


 嬉しそうにほころんだユリゼラが部屋の中に駆けていき、男爵の優しい視線がそれを見送る。


「すまないな。ユリゼラのわがままに付き合わせて」

「いいえ」


「君が来てからは良い刺激にもなっているようで、ユリゼラの表情が明るくなった。すっかり足止めをしてしまっているが、感謝している」


「そう仰っていただくほどのことはしておりませんよ」

 そうか、と微笑み、男爵がそうだと思い出したように言った。


「十日後、ユリゼラの二十歳(はたち)の誕生日を人を集めて催すのだが、避けたほうが良いだろうか」

「いえ。それは大丈夫でしょう。彼らが来たからには、十日もあれば片付いているかもしれない」


「そうか。それは頼もしい。もし片付いていても、ダリ殿は出席してくれるかな。ユリゼラも喜ぶ」


「いえ、私は。そういった場にふさわしい衣装の持ち合わせもありませんので」

「それくらいはこちらで……」


 言いかけた男爵だったが、帽子を被ったユリゼラが現れ、口を閉じる。行っておいで、と送り出され、ダリはユリゼラと歩き出した。



「十日後は、お誕生日だそうですね。おめでとうございます」

「ありがとうございます。二十歳(はたち)までは生きられないだろうと医者から言われていたと、両親がよく申しますので、それだけでも親孝行が出来たのかと思っていますわ」


 ユリゼラがゆっくりと微笑み、ハーシェルもつられる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ