Ⅲ 王都の消息ーⅵ
翌日、早くから二人は男爵邸に現れ、ユリゼラが挨拶をするそのうしろに控えていたハーシェルに気が付くと、ガゼルが「よっ」と手を上げる。
「お前に朗報だ」
「なんだ?」
「ダリが倒した分、あっちは増援されたらしい」
「とんだ朗報だな」
サンドラがにやにやしながら言う。
「昨夜からいろいろと報告があがってきて、大体の位置は把握してる。ついでに言うと、わたしたちが来たことでやつらも焦ってるらしいから、しっかり警護してくれ」
「つーか、一隊しか来てないのに焦らすって、お前らも悪名高いことだな」
「お褒めに預かり光栄だ」
胸に手を当て、略式の騎士の礼を取っておどけるサンドラに、ユリゼラが目を見開いたまま眺め入っている。
「動きがあったらまた連絡する。城内の警備に一人置いていくから、仲良くしてやってくれ」
じゃ、と二人はそれだけ言うと、もう一度男爵とユリゼラに礼を取って去って行った。
「ダリ殿は、あのお二人と懇意であったのか」
男爵が目を丸くして振り向き、ハーシェルは頷く。
「王都で護衛としてうろついているときに知り合いまして。いろいろと、協力も仰ぎました」
ほう、と男爵がユリゼラと顔を見合わせる。
「私、あんなに綺麗な殿方を初めてみました」
「それは長官ではなく、金髪の方を指して仰っている?」
ユリゼラの言葉を確認すると、ええと頷かれ、ハーシェルはくすっと笑って言った。
「あんななりですが、あれは女です」
「え?!」
男爵とユリゼラの声が重なり、ハーシェルは笑って言った。
「彼が……いえ、彼女が、レフレヴィ―伯爵令嬢、サンドラです」
「あの方が……」
呆然とする二人に、「王都でもずいぶんと姫君たちをがっかりさせておりますよ」と添える。さすがに、噂は知っていたようだ。




