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Ⅲ 王都の消息ーⅴ

 そんなことを微塵(みじん)も感じさせたことのないガゼルに、目を丸くする。


「うーん、世間的に見ると、適齢期というやつだろう、俺たち」


 言われてみるとそうかと、ハーシェルは己の年齢を振り返る。いや、むしろ遅い部類に入るのかと、経過した年月に愕然とした。


「自分が結婚するとか、考えたこともなかったなー」

「今のお前は特にそうだろうな。まあでも」

 サンドラが微笑み、穏やかな声音で言う。

「ハーシェルの立場をわかって、好意を持ってくれる女性が現れるといいな」


 自分の好みでそんな女が現れたらいいな、と軽薄なことを考えながら、ハーシェルはそうだなと頷く。女に追いかけられるのは主にクロシェの役目で……げんなりしている友をからかうことが、楽しかった。今はそんな日々すらやけに遠く感じる。


「討伐、いつから動くんだ?」

「それほど時間をかけるつもりはないんだ。明日、男爵に挨拶に行ったあとはこの辺りの地形の確認をする」


「そうか。お前たちが動き出したら、焦って動き出すかもしれないな。しっかり警護しとこう」


「そうしてくれ。ユリゼラ殿の護衛が確かでないならサンドラを置いていくつもりだったんだ。ハーシェルがいるなら人員()かれなくて済むし、助かるよ」

「お前たちほどじゃないが、少しなら当てにしてくれていい」


 彼らに、本気の試合で勝てたことなど一度もないのだから。サンドラが彼女の傍にいるならそのほうが安全かもしれないが、彼らに当てにされて、悪い気はしない。


「じゃあ、また明日」

「ああ」

 ガゼルとサンドラが、窓から抜け出すハーシェルを見送ってくれる。


「お前が生きていて、安心した」

 サンドラの言葉に頷き、ハーシェルは着地を決めた。



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