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Ⅱ レジエントーⅹ

「適切な処置を早くしていただけたおかげで、それほどひどくならずに済みましたの。それもこれも、ダリ様のおかげです」


 靴を握りしめ、ユリゼラがふんわりと微笑む。昨日とは違い、顔色も良くはっきりとした表情のユリゼラは。


(確かに)

(魔性だな、これは)


 女の美醜にそれほど頓着しない自分でも、花がほころぶような美しさとでも言うのだろうとしか言えない「美」を感じる。王都に咲く花にはない、けれど瑞々しく、あふれるほどの気品。


「あなた、いつまでここでお話をなさるおつもり? 早く中へご案内して」


 呆れたようにそう言う女の声にハッとして振り向くと、

「母のレメディオスと申します。娘を助けてくださって、感謝を申し上げますわ。どうぞ主人のもてなしを受けてください。そして願いを聞き届けてくださると、さらにありがたいわ」


「願い?」

 笑って口を閉じた夫人が、さあどうぞ、と中へ促す。ハーシェルはその威圧感すらある微笑みに、仕方なく館内へと歩を進めた。




 男爵位とはいえ古くからある家柄だけに、館の中には年代物が多く見受けられた。レジエントを繁栄のままに導いてきているだけあり、適宜手を入れられ、美しい外観と内装が保たれている。代々受け継がれているものを活かして品よくまとめられた城の中は、初めて足を踏み入れたハーシェルにも、どこか懐かしさと心地よさを感じさせるものだ。


 応接間に通され、促されるままに椅子に掛けると、香りの良い紅茶と菓子が出され、隣にロムニア男爵がにこやかな顔で腰を下ろした。


「ダリ殿の物腰は洗練されているな。騎士章はお持ちでないようだが、どこかの貴族のようだ。もしよければ、旅の訳でも聞かせてくれないか。協力できることがあれば力になりたい」


「は……あ」

 素性を明かす訳にもいかず、さりとて明確な目的があるでなし。ハーシェルは返答に困ってしまった。


「そうですね……正確に申し上げるなら、次の目的地となる場所を探しているところです」

「というと、急ぐ旅をしているわけではない、と」


 それは好都合、といわんばかりの男爵は、うんうんと大きく頷いている。

「なら、しばらくここに滞在しないか、うん、それがいい」

「は?」

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