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Ⅱ レジエントーⅷ

 素直に認めてしまうと、喉の奥が熱くなった。こんなに感傷的な自分など、初めてだ。


 とりあえず、今は眠ろうと上掛けを引き被り、ハーシェルは固く目を閉じた。



 翌朝、早くから目が覚め、ハーシェルはゼタを連れて昨日の川べりまで行った。川の水は冷たく、顔を洗って気分を一新すると、少し散策するつもりで下流へと足を向ける。すると昨日彼女を拾った場所よりも少し下流に、地滑りらしきあとと、泥に汚れた小さな靴を見つけてハーシェルはそれを拾い上げた。


「これ、要ると思うか?」

 ゼタに聞いてみるが、もちろん答えなどなく。

 ハーシェルは一応、持って帰ることにした。


 宿に戻ると、ハーシェルの行方を探していた宿の主人から、慌てた様子で手紙を渡される。


「あんただったのか! 姫を助けてくれたのは」

「は……?」

「男爵から手紙が来ているんだ。執事が探しに来てね」


 そう言って渡された手紙には封蝋がしてあり、男爵家の紋章が押されている。宛名は「娘を救ってくれた騎士殿へ」となっており、「騎士って誰が」と思わず口にし、「そりゃああんたなんだろう?」と目を丸くする主人に、「失礼ですが」と、老齢の執事が現れた。


「昨日はお嬢様をお救いくださいまして、ありがとうございました」

 恭しく頭を下げる執事に、ハーシェルは尋ねる。


「よく、俺がここにいると突き止めましたね」

 昨日、自分を引きとめた男だ。顔を見られている分、逃げようがない。


「お嬢様の指示です。ゼタという栗毛の馬をとても大切にしていらしたから、宿屋に泊るのでも厩舎の質を気になさるはずだと。厩舎の質の良い宿屋というのは限られておりますから。それでおいでにならなければ、野宿に適した場所のいくつかを探すようにと、命じられております」


「なるほど」

 きちんとハーシェルの特徴となるものを見ていたという訳だ。


「で、この手紙は」

(あるじ)より、ぜひお礼を申し上げたいので再度城においでいただきたいというお願いでございます。本来でしたら出向くのが筋と存じますが、はっきりとおいでの場所がわかっていたわけでもございませんので。お礼のための招待状でございます」


「別に、礼をしてもらうほどのことはしていない。怪我をしていた人間がいたら、助けるのは当然のことだ。恩に着てもらうほどのことじゃない」


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