表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/97

Ⅱ レジエントーⅲ

 ゼタを連れ、川に沿って歩き出す。少し草葉のあるところの方が眠りやすいかと下流に行くと。


(ん……?)

 茂みに隠れるようにしてうずくまる、女を見つけた。


「どうした? 具合でも悪いのか」

 放っておくのも気が引けて、ハーシェルは一応声をかける。親切の押し売りをするつもりはないが、本当に困っているなら見過ごすのも後味が悪い。それに、一見すると小さくて、まだ子供のようにも見えた。


 ピクリと肩を動かし、恐る恐る振り向いた彼女は。


(お)

(美人じゃん)


 王都でもなかなかお目に掛かれないほどの、清楚さが(こぼ)れ出るような美しい顔立ちをしていた。


(さら)おうとか思っていないから安心しろ。具合が悪いなら、家か病院まで送ってやるが」

 端麗な顔には怯えの表情も見え、白すぎる顔色は明らかな不調を訴えている。


「ご親切に、ありがとうございます……」

 わずかに震える声で、けれどしっかりとそう答えると、彼女は少し迷ったようだが、ハーシェルをまっすぐに見上げて言った。


「家に、送っていただけますか。足を、痛めてしまって。手を、貸していただいても?」


 身なりは質素だが、彼女のその物言いは貴族だ。お嬢様がお忍びで無理でもしたのかと、ハーシェルは彼女に近付いた。


「失礼を」

 ドレスの裾を少しだけめくり、これは痛そうだと思わず顔をしかめる。片方の足は靴がなく、擦り傷と切り傷で血が滲んでいる。そして赤く腫れあがり、少し触れるだけでも激痛が走りそうだ。


「どこかから落ちたのか? とりあえず、汚れを落として止血だけしたいんだが、いいか?」


 青い顔のまま彼女は頷き、「お願いします」と小さな声で言った。


 ハーシェルは川でハンカチを濡らし、彼女のドレスをそっとめくると、右膝から足首にかけての傷を慎重に拭う。悲鳴でもあげられたら面倒だな、と思っていたが、蒼白な顔はじっと耐えてのけた。細かな石の破片なども取り除き、広い傷口を綺麗にしたところで、新しい布を裂き、巻き上げて止血する。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ