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20.芸術でトリップ

 

ルベール兄さまが旅支度で忙しくしているので、今日は大人しくお勉強です。


でも、明日にはマラーナ行きの船に乗って行ってしまうことを思うと、そわそわして授業に集中できそうもありません。嫌だなぁ、淋しいなぁ。


ワーナー先生がしょぼくれる私に『兄上さまに土産をおねだりすると良いですよ』と、マラーナの貝細工のお話をしてくれた。

白くて清楚な装飾品は、海に重きを置いていないティストームでは流通していないのだそうだ。

他にも虹色の真珠や色とりどりの珊瑚など、巧みなワーナー先生の語りに乙女心が刺激されてしまう……アクセサリーはそんなに欲しいわけではないけれど。

ああいう芸術品は美術館とか博物館で観るのがいいのだ。どちらもないのだけど。なぜないの?


「絵画や工芸品を公開する、催しのようなものはないのですか?」


歓談会(パーティー)を開いてお抱えの芸術家の作品を紹介したり、収集家たちが仲間を集めて持ち寄ったり(自慢大会)しているようですよ。しかし、王女殿下が仰るのは平民でも観に行ける事が出来る『場』という意味でございますね?」


頷くと、あっさり『ございません』と言われてしまった。


「王女殿下が大きくなられましたら、お好みの物を展示したサロンをお開きになってはいかがでしょう。公開の方法は今は思いつきませんが、平民も入場できるよう工夫して……そうですね、有料にするのもひとつの手ですね」


おおっ、それは面白そう!


「わたくし、前世ではいろんな趣旨の展示館を巡ったのですよ。お手頃な料金で気軽に入ることが出来て、まったりと展示品を眺めることが出来たのです。楽しんだ後は併設されている喫茶室(カフェ)夢想(トリップ)することもできましたし、それはもう楽しい時間を過ごせたのです……そうですね、大人になったら素敵なサロンを作ります。どんなふうにしましょう。楽しみだなぁ……」


一番好きだったのが、アンティークな自動人形(オートマタ)が演奏するオルゴール館。あれはどこの県だったっけ。歴史を感じさせる雰囲気が、ため息が出るほど素敵だった。


時計台の鐘が音楽になっているのも憧れるなぁ(学校のチャイムじゃないやつ)

王都でも時間を知らせる鐘は鳴るけど、自動ではない。係の者が鐘突き塔に登って1日6回三時間(さんとき)ごとに鳴らしている人力だ。


そんな鐘突きの正確な時間は、日時計と振り子時計で計っている。振り子時計の方は凄く高価だから、王国管理の建物か、お金持ちしか持っていないらしい。

言うまでもないけど王城の大広間にもある。お父さまより大きいのが。あれがからくり時計だったらすっごく楽しいのに……




ワーナー先生がクツクツ笑ってる。




……机の上が藁紙だらけになっていますね。




「鼻歌が始まったら、ペンを握っていただくよう言われていましたので……本当にこうなるとは、クスクス」


「ただいまです……ははは」


……自動書記みたいでカッコ悪い。自動書記……自動書記じゃん! ガビーン!


「これは自動で音楽を流すのか?」


おっと、アルベール兄さまが既に数枚持って見分しておりました。お迎えに来てくれていたのですね。


「オルゴールという楽器の図面ですね……あ~」


簡単な手巻きオルゴールは、ぜんぜん簡単じゃなかった。いやいやいや、こんなに複雑なの? 地道に演奏したほうが早くない? この切符切りみたいのは何に使うの? ワカンナイ……ひっ、これ自動人形? なぜ日本人形をチョイスした? どうしてリアル絵? 私の画力じゃない。骨組み気持ち悪っ! こっちは? 鐘が並んでるのは時計台の裏側ね。ぐはっ、歯車だらけ。ん? 何この図面『三重振り子が面白い!』って誰のお勧めよ。



……もう見たくないので、藁紙は全部裏返した。



「重要な情報は一個もありません。新城と空中街道を優先してください」


もっと言うなら、空中街道を北に伸ばすのを優先して欲しい。

リボンくんの領地に遊びに行きたいし、将来トルドンに嫁いでも里帰りしやすくなるから。


「そうか。では父上の執務室に行くぞ」


やった! お父さまの執務室に行くのは久しぶりです。

黒色火薬についてもありますが、飢饉回避のご褒美も用意してあるらしいのですよ。らん、ららん♪





「よく来た、シュシューア。さぁ、おいで」


お父さまのお膝ポンポン。私の指定席! わ~い!



……今日はもう一度、お花畑に往っちゃうかもしれません。



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