16.くださいな
「シプ~ シプ~ プ~ド プ~ド~♪」
わくわくわく。
先頭の人は、フライドポテトとレベサイダーを買ってイートインへ向かった。
炭酸ジュースの注文、しかとこの目で確認いたしました。毎度ありがとうございます。
ふふふ。コーラはないけどサイダーはあるのですよ。最初は上手くいかなかったんだけどね。
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松葉サイダーの作り方
①松葉の茶色い部分を取って簡単に洗う。
②松葉+砂糖水を蓋の甘い瓶に入れる。
③日光に当てて発酵させる。
(夏場は3日/冬は10日ほど)
※器具の煮沸消毒を忘れずに。
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仕上がりは微炭酸。薄っすらと残る苦味が子供の私には邪魔だった。
〈水に溶かした重曹+水に溶かしたクエン酸〉でシュワッとなる知識はあるのだけど……重曹ってなんだっけ? あれ中華麺作る時に使うやつだよね。じゃあ、”かんすい”のこと? え~と、なんだっけ、最近この手の話題があったような……う~ん。
思い出せなくてブチブチ言っていたら『ゾンアとボゼを忘れましたかな?』とシブメンがイティゴポ○キーをポリポリ食べながらヒントをくれた。
「ゾンア? ボゼ?」
覚えていないので、ぜんぜんヒントにならなかった。
「じゅうそうはあるかりのこと…すなわちゾンア。くえんさんはすやレベのさんみせいぶん…すなわちボゼ」
……ポゼと言った後に松葉サイダーを飲むシブメン。
説明が日本語なのはどうして? シブメン日本語習得したの? 恐ろしい子!
「麦酒のように水を発砲させたいのなら、確かにこれでは刺激が足りませんな」
そういうわけで、リンゴ酢の粉末/レベ汁の粉末を使った2種類のサイダーがデビューしたわけだ。
炭酸なので作り置きできないのが大変だけど、今はそれでいいのだそうだ。
なぜなら瓶の数を揃える計画と、回収を含めた流通を考える方が先だからだと言っていた。会長と副会長が同意見なのだから当分先になることだろう。
提出済みの、コルクを使った王冠栓と打栓機の図面……没にならないといいな。
えへへ、話は変わりますが、私は先行してメロンソーダを楽しんじゃったりしています。
内緒なのです。離宮だけの秘密の旨々なのです。
だって、メロンは上流階級で毎年取り合いになるほどの超高級果物だっていうのですもの。
スプーンで掬って食べる以外は考えられないようなオシャレ果物……それは『メロン』
ミキサーでぐちゃぐちゃにしてしまうなんて周囲の反応が恐ろしいと、ミネバ副会長に門外不出を宣言されてしまった幻のドリンク……それは『メロンソーダ』
まさかそれ程とは……食べ物の恨みは恐ろしいという事ですかね。
「氷と一緒にミキサーでガーした生ジュース……とっても美味しいのに」
私の呟きを聞いてたもれ。
「ミルクを入れた生ジュースなんて、もっと美味しいのに」
みなさん、聞き逃さないで。
「メロンソーダの上にバニラアイスを浮かべて、シュワシュワとアイスが溶けていく……それはもう……」
次の日──
シブメンがメロンを3個持ってきた。
(取り合いになっているはずのブツの入手経路は不明)
同日──
嫌がるチギラ料理人に無理やりメロンシロップを作ってもらった。
(勿体ない、勿体ないと嘆いていた)
喫茶店で飲めるような綺麗なエメラルドグリーンではないけれど(今さら着色料だと気付くこのニブさ)バニラアイスの上にサクランボのシロップ漬けをちょんと乗せて、うん、可愛い。
おやつをクリームソーダにしたら全員虜になった。
シブメン宅の温室にメロンが加わった。テッテレ~♪
サイダー or ソーダ……どちらに統一するのかは、私の関知しないことである。
……話がずれまくりました。戻しましょう。どこに戻るんだっけ? そう、列の二人目が注文するところでした。
次の人は、アメリカンドッグを買ってイートインに。
あ~、また話がずれそうですが、アメリカンドッグにはやっぱり『魚肉ソーセージ』でしょう?
作りましたとも、チクワに酷似したモドキを。
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魚肉ソーセージもどきの作り方
①タラ系魚の白身をフードプロセッサーですり身にする。
②網で裏ごしする。
③塩+砂糖+きな粉+粉末たまねぎ+片栗粉+香辛料を加えて、すり鉢で滑らかにする。
④棒にすり身を巻き付けて蒸して完成。
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粉末タマネギなんていつの間に? アルベール商会は何でも粉にしちゃうのでしょうかね。
次の注文はジャガバター、ぱりぱりパンのマヨタマ乗せ、飲み物各種と続いて私の番が来ました。
「いらっしゃいませ。ご注文をどうぞ」
緑の制服を着たお姉さんがカウンターから出てきて、私の前にしゃがみこむ。
目の前に開いてくれたのはカラフルポップなメニューだ。
『期間限定! シプード兄妹アイス!』
これだ! 目立つようにシプード兄弟の絵が描いてある!
男の子用にシプーくん。女の子用にプードちゃん。
ルベール兄さまにお伺いを立てたらニッコリが返ってきた。私が注文していいんだ!
「シプーくんと、プードちゃんのアイスを一個ずつ下さい」
「かしこまりました」
お姉さんはスマイル0円を売ってくれてカウンターに戻った。
続いて、ルベール兄さまは私の横で身をかがめて『ひとつ、800ドリーだよ』と、硬貨がたくさん乗った手の平を差し出した。
「………」
兄はそれ以上何も言わなかった。
(私に計算しろと言っている!)
なんて非道な! プードちゃんアイスと対面するという大事な時に!
「う、後ろに並んでいる方に迷惑がかかります。お兄さまがお支払いしてくださいませ」
「気にしなくていいぜ、ゆっくり勘定しな」
後ろの青年! 空気を読め! 計算してるうちにアイスが溶けちゃったらどうするのです!
はっ! 店のお姉さんが小さく頷いて待ってくれている。バックヤードの人もアイスを盛るのを待ってくれている。
うぐぐぐ、やるしかないのかっ。
「すぅぅ~、はぁぁ~」
深呼吸で気合を入れて、いざっ!
……800ドリーなら、100ドリーを8枚。800ドリーの山を2つ作ればいいのよね。
この100ドリー硬貨を1,2,3,4,5,6,7,8。よしっ、もう一山1,2……足らない!
「シュシュ、こっち」
ルベール兄さまは違う色の硬貨を指さした。
1000ドリー硬貨だ! 1000ドリーは指10本分!
「ルベール兄さま、指を貸してください」
1,2,3,4,5,6,7,8,で続けて、1,2,に次は私の指で、3,4,5,6,7,8。私の指が6本。600ドリーね。100ドリーを1,2,3,4,5,6枚と、1000ドリーを1枚。
今、私の手にアイス2個分のお金がある! どやっ!?
「「「おぉーっ!」」」
周囲から拍手があがった。注目されてた。でも、褒められて嬉しい。
お金を一旦ルベール兄さまに渡して、皆に会釈を返した。手を胸に当てて頷くやつ。オプションでドレスをつまんでみた。3方向に向かってやった。
最後にルベール兄さまに預けたアイス代を受け取って、代金を支払う。カウンターには届かなかったから後ろから抱き上げてもらいました。
「1600ドリー、ちょうど頂きました」
初めてのお買い物終了!……じゃなかった、お品物を受け取らなきゃね。
バックヤードの店員が両手にアイスを持ってホールに出てきてくれた。
ルベール兄さまにシプーくんアイスを。
私には腰を低くして目線を合わせながら『落とさないように、お気を付けください』と、プードちゃんのアイスをしっかり手渡してくれた。
「プードちゃ~ん! かわいい~っ!」
ワッフルコーンの上にプードちゃんがポンッと乗っているのだ。
白チョコと茶チョコで作った丸い目が私を見てる。頭の赤い花飾りは飴ね。口はチョコペンを使ったみたい。おちょぼ口で笑ってるのです。キュゥゥゥゥン。
「シプーはこんな感じだよ」
ルベール兄さまが、プードちゃんの隣にシプーくんを並べてくれた。
うふふふ、シプーくんは片目をつぶってベーってしてる。飴の赤い舌が突き出てるの。可愛いなぁ。
「あそこに座って食べよう」
は~い。
落さないように気を付けて、ゆっくり、ゆっくり。
周囲の人たちが道を開けてくれて、障害になりそうな椅子までどけてくれたりして、プードちゃんは無事にミニテーブルにたどり着いたのでした。





