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5-2.ドレミファドドン!1

 

王城・王宮を挟んで離宮の反対側にある『音楽堂』は、ローマ神殿のような柱とアーチ装飾が華やかな、城より少しだけ……だいぶ立派な建物だった。

うん。やっぱり新城は必要ね。実感しちゃったよアルベール兄さま。


通された広い待合ロビーも壁の花彫刻がやたらと優美で、仰ぎ見る高い天井には透け感のある飾り布が波打つように舞っていた。

適度に布が揺れ続けているという事は、天井に風を流す何かの仕掛けがあるのね。なんという贅沢な作り。


だが正解だ。

ここはとても素敵な異空間だ。

非日常の演出は、芸術には欠かせないエッセンスなのだ。


これで癒しの音楽が流れていたら……あ。


微かに楽の音が耳に届いた。

フッと聞こえ、すぐ消えること数回。

防音室の扉が開かれた時に漏れた音だ。

インテリアに気を取られていたけれど、そういえばここは音楽堂だった。


おぉ? 遠方の壁に巨大なタペストリーを発見!


スタタタ……


別のソファーで会談している人たちの間をランド走りで通り抜ける。


視線が集まったけど好感的だからモーマンタイ。


付添いのヌディは……楚々と追って来ている。



「ふむ」



シブメンを真似た訳知り顔で、壁いっぱいに掛けられている巨大タペストリーを見上げる。


建物の中心がすり鉢状のコロシアムのようだ。

天井はドーム型で開閉が可能なようだ。

そこで大規模なコンサートを開くようだ。


タペストリーが満員御礼の演奏風景だから間違いない。

その横に案内図まであるから間違えようもない。


この案内図からすると、吹き抜けになっている大演奏会場をまるっと廊下が囲い、その外周を大小さまざまな部屋が囲んでいる。

1階、2階、3階と、なんと地下まであるのか。

小さ目な部屋は練習室。大きめな部屋は中小演奏会場。楽器室に、資料室に……記載がない大きな空間は多目的ホールかもしれない。コンサート会場のロビーのような?……見たい、見に行きたいぞ。


「王女殿下」


ヌディの囁くような声に呼ばれた。


振り向くと『お待たせして申し訳ございません』と頭を下げる楽士服姿の青年がいた。


「音楽堂の案内役を務めさせていただく、マガルタルと申します」


10代後半。中肉中背。藁色の長髪。地味顔。存在が薄い……今まで私の周りにはいなかったタイプだ。

初期のワーナー先生のように貧乏くじを引いた人かもしれない。


「シュシューア王女殿下の専属侍女、ヌディです」


斜め前に立つヌディが対応する。

案内役の楽士も声をかけたのはヌディにである。


訪問の先触れを済ませ、付添人がいる場合は、お姫さまは名乗りません……えと、身分の問題だったっけ? 私がまだ子供だからだっけ? ここがお部屋ではなく公共の場だから? ………忘れた。



──ぴしっ。



レディの基本『立ち姿』で誤魔化す。


微笑むオプションぐらいは付ける。


目が合った楽士は『それではこちらへ……』という感じの表情で、流れるように背を向ける。

私とヌディは無言で彼の後についていく。



立ち姿……OKだった。


オールマイティに使えそうね。覚えておこう。





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