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【9/22完結】配達男子と仮面女子〜出前バイトの少年、配達先でギャル系美少女の秘密を知る〜  作者: 丸深まろやか


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020 反抗とお節介


 静樹が言う『あれ』というのは、おそらくあれのことだ。


 入学してすぐ、具体的には、クラス分けがあって二日目のホームルーム。


「今から学級委員を決める」


 担任の教師がそう言った。

 40代くらいでわりとガサツな、フジタという男性教師だ。


 あまり規則に厳しくなく、基本的に無干渉なので、今となってはわりとクラスからの評判も良い。

 ただ、強引に話を進めようとするところや、面倒なことは無理やり終わらせようとするところがあって、俺はそこがあまり好きではない。


 この時もそうだった。


 学級委員の仕事は、主にクラスの代表としての行事参加と、あとは雑用だ。

 『学級委員はキツいだけで損』なんていう噂が、なぜか早くも出回っていたこともあってか、立候補者は誰もいなかった。


「おい。誰かいないのか」


 藤田は明らかにいら立っていた。

 気持ちはわからないでもないが、当事者のこっちからすれば、だからといって自分がやる、とはなかなかならないもんだ。


 こういう場合、他薦になるのが普通なんだろう。

 けれどまだ、クラスの連中のことはお互いになにも知らない。

 この時点では特に目立つやつもいなかったせいで、誰かを指名するだけの理由もない、という感じだった。


「仕方ないな。じゃあ誰か……」


 言いながら、フジタはゆっくり教室を見回し始めた。

 途端、多くの生徒がサッと目をそらす。


 賢明なのかもしれない。

 この状況では、目が合ったというだけのきっかけすら、向こうに与えたくないのだろう。


 だが、俺を含む鈍いやつらは数人、まっすぐ前を向いてるようだった。


「……名賀《なが》」


「えっ……」


 しばらくして、フジタは一人の名前を呼んだ。

 名賀というらしいその女子は、不安そうな顔で固まっている。


「名賀、すまんが、学級委員を頼めないか?」


「え……あの」


 教室に、安堵のため息が広がるのを感じた。


 ひとり標的になったなら、もう平気だろう。


 クラスメイトたちがそんなふうに思っているのが、手に取るようにわかる。

 フジタも、まさか断らないだろう、と思っている顔をしていた。

 名賀という女子はいかにも真面目そうで、気も弱そうに見えたからだ。


「クラスのためなんだ。どうだ?」


「……えぇ」


 もしかしたら、いや、間違いなく、俺がおかしいんだろう。

 でも俺には、このやり口も、フジタや他の全員の思惑も、どっちも気に入らなかった。


「いや、その決め方は違うと思うんですけど」


 俺の言葉は、思いのほか大きく教室中に響いた。

 クラスの連中も、フジタも、名賀も、呆気に取られた表情をしていた。


 名賀以外から反対意見が出るなんて、思ってもみなかったんだろう。

 反論すれば、今度は自分に矢印が向く。

 やりたくないのなら、なにも言わないのが得策だ。


 だから、俺と同じ考えのやつがいたとしても、自分を犠牲にしてまで異議を唱えるつもりはなかったはずだ。


「お前は……蓮見《はすみ》か。なら、お前が代わりにやってくれるんだな?」


 ただ、俺にだってそんなつもりはない。


「嫌です」


「なっ……!」


 フジタは、信じられないという顔をした。

 それからすぐに顔をしかめて、言った。


「なら、口出しするな」


「いや、なんでですか。決め方に反対するのと、立候補するのは別だと思うんですけど」


「いつまでも決まらないから、こうしてやってくれそうなやつに頼んでるんだ!」


「やってくれそうなやつ、じゃなく、断れなさそうなやつでしょ。周りがなにも言えないからって、そのやり方は良くないんじゃないですか」


「なにぃ……?」


 フジタは、今にもキレそうになっていた。

 周りの空気が凍り付いているのを感じる。

 お前がやれよ、と思われているのだって、明らかだった。


 結局、こうなったか。

 まあ、わかり切ってたことだ。

 それでも口出しすることを選んでしまったんだから、自分が悪い。

 心からそう思うわけじゃないにしろ、場を収めるなら、そう解釈するしかなかった。


 一度、息を吸う。

 そして覚悟を決めてから、ゆっくり吐いた。


「わかりまし」


「じゃあもうあたしがやりまーす!」


 俺が答える寸前に、全然話に絡んでいなかった女子が、いきなり手を上げた。

 俺を含めた全員の視線がそちらへ向く。

 その女子は立ち上がって、「対抗馬は? いませんよねー。じゃあ、よろしくお願いしまーす」と威勢よく言い放った。


 そうして、ホームルームは無事に終了した。


 俺がやったことが正しいかどうかは知らないし、そのことにこだわりもない。

 もっと言えば、こんな出来事は俺にとって、本当に大したことじゃなかったんだ。

 なにせ、結果的には俺も名賀も、他のクラスメイトも、助かったのだから。


 ただ、納得がいかなかった。


 代役にならないなら、やり方に反対もできない。

 そんなのはおかしい。

 理屈が通ってない。


 それを誰も指摘できない空気も嫌で、その空気の犠牲になるやつがいるのも、嫌だったんだ。


 人付き合いも、やり方も下手なくせに、こういうことに首を突っ込むから、バカだっていうんだよ、俺は。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 何とも人の世では生きづらい性質をしてるんですね蓮見君。 フジタ教諭とて雇われの身。 方法論はともかくとして、時間内で纏める為の行為です。 それが誰の為のものなのかは別ですが。 個人的には好…
[一言] なるほど、腫れ物になってしまったのね
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