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神様に贈る言葉  作者: みんみ
ノア デ ステファーノの始まり
5/50

能力者


「さてと、お主が約束を守ってくれたのじゃ。 我も約束を果たさねばならんのぅ」 


どら焼きを食べて満足したのか、ちるはいつもの場所で身体を伸ばした後、真っ直ぐと俺の目を見て言った。


「本当か?? いつもはぐらかしてたしどうせ今回も教えてはくれないんだろ??」


「いや、今回はちゃんと話す予定じゃよ。 主も頑張ったのだからな」


「……本当か?」 


 思わず同じ言葉を繰り返す程に俺はちるの言葉に驚いていた。


 約束ってのは俺が街に一人で行ってどら焼きを買ってくるって事だったんだが、まさかそんな事で教えてくれるなんて思ってなかった。 

 いや、俺にとっては大きな出来事ではあったんだが、それでも今まで散々聞いても教えてくれ無かったのになんで急に??

どら焼きにでも当たったのか??



「お主は本当に疑い深いのぅ。 まぁ散々勿体ぶっておった我にも原因はあるのかも知れんが今日は本当じゃ 全て話そうと思っておるぞ!!」


少しトーンを落としてちるは答える。

その口振りでちるが本気なのだと言う事がわかった。


「な、なんで急に教えてくれる様になったんだ??」


「特に理由はない!! なんじゃ?? お主はずっと知りたがっておったのでは無いのか?? 

 別に我はどっちでも良いのだぞ?? お主が興味なくなったのならばわざわざ話す事でも無いしのぅ」


 そう言うとちるは不満そうに口を尖らせて俺に外方向いた。

 確かに最初の方はとても興味あったし、今でも知りたいって欲求は変わらない。 でもなんだが少し俺は怖かったのだ、これを聞くと俺の中でのちるが別の何かになってしまう様なそんな気がしたから。


 俺はちるの方へと目を向ける。 

 不貞腐れている様にほっぺを膨らませている姿を見ていると不安なんかよりちるの事をもっと知りたいと思う気持ちの方が大きい事に俺は改めて気付く。


 そうだ、今までだってちるが特別な存在だって事は理解していた。 

 それに今更なにを聞いた所で俺の気持ちに変化は無いじゃないか。

 小さく深呼吸し意を決した。

「悪かったよ、ちる。 興味が無くなったわけじゃないんだ、急な出来事に驚いたからさ。 教えて貰って良いか??」

 

 俺がそう言うとちるは待ってましたといわんばかりにすぐさま振り向いた。


「全くお主は色々深く考えたがる癖があるのぅ、もっと気軽に考えれば良いのに頭の中で色々ごちゃごちゃとするのが好きらしいのぅ。 もっと直感を信じて行動してみるのも良いと思うぞ??」


「悪かったって。 で、ここで言う約束ってのは今までの俺の質問に答えてくれるって事で良いんだよな??」


「もちろんじゃ、今日の我は何でも答えるぞ!! 

 まずは何を聞きたのじゃ??」


「そうだな……まずはやっぱりちるは何者なんだ??」


「神じゃ」


「即答だな。 まぁいいや、じゃあ何で自分が神だって言い切れるんだ??」


「神として生まれたからじゃのぅ、お主が自分を人間である事を疑わないのと同じく我は自らを神だと疑っておらんだけじゃ」


「いつ生まれたんだ?」


「三百年前じゃのぅ。 正確に言うなら明日で丁度三百年って事になるかのぅ」


 ここまでは何回か聞いた事がある。 いつもはぐらかされるのは次の質問からだ。


「一体どうやって生まれたんだ??」

 

ちるは少しだけ迷う様に顔をしかめたが、思いの外すぐに次の言葉を口にした。


「三百年前のあの日、我は人類を救う為に生み出された。 二人の人間の手によってな」


「……二人??」


 俺は言葉に詰まった。 

 正直言って神様を作ったのが人間だと言う可能性は考えていたし、むしろそれ以外のあり得ない事だと思っていた。 

 それでもいざ本人の口から聞かされると信じられない気持ちにさせられる。

 

「本当に二人の人間がちるを??」


「まぁ厳密に言えば二人だけでは無いのじゃがな……。 まぁさっきの肉じゃがの話の所で言うお袋、つまりは両親じゃな。 我にとっての両親はその二人って事になるじゃろうなぁ」

 

 ちるが静かに話すたびに自分の胸の鼓動が大きくなるのがわかる。 おそらくは誰も知らないこの世界の歴史を俺は紡いできた当事者から聞いている。

 

 そう思うと先程までの色々な雑念は吹き飛び、今はこの会話を楽しもうと考えていた。

 

「その二人ってのは一体何者なんだ??」


「見た目は普通のただの男女じゃよ。

 男の名はカミヤ。 サカキ・カミヤ。 とても強くまた面白い男であったと聞くぞ!! 

 そして女の方はソフィア。 

 ベルリン・ソフィア。 とても美人で優しい女であったと聞いておる!!

 我も直接は会った事は無く後から聞いた話なのだが、二人とも常人とは少し違った考え方を持っておったらしいのぅ。 勿論そうでもなきゃ神を生み出そうなどとは思わんじゃろうしな!!」


 そう語るちるはとても誇らしそうだった。 その様は自分の両親を自慢する普通の少女だ。


「カミヤにソフィアか。 ちるにも両親が居たんだな」


「勿論じゃ!! 彼等が居なかったらそもそもお主も生まれては居なかっただろうのぅ?? 何故なら我が居なきゃ人類は絶滅していただろうしのぉ!

 そういった意味では、二人は人類を救った大英雄にして今の世界の人類全ての父であり母と言っても過言では無いのじゃ!!」


「確かにその通りだな。 本当に凄い人達が居たんだなぁ」


 俺は素直に感心する、人類を救う。 

 それは本当にとてつもない偉業だ。 


 俺には想像も出来無い。 きっとその場に居たとしても、どうしようも無いと諦める側の人間だろうしな。


 たけど、どうしても大きな疑問が残る。 

 歴史にある通り人類絶滅危機に瀕した彼等は神様を作り上げその危機を脱した。 

 過程は理解したが問題は方法だ。 口では簡単に言えるが実際は違う。

 俺は満面の笑みを浮かべているちるにその疑問をぶつけた。


 「なぁ一体どうやってちるを、いや、神様を生み出したんだ??」


 俺の質問にちるは笑みを止め一拍置いてからゆっくり口を開く。


「ふぅー、やはりそれが一番気になるか。 まぁ大方はお主の予想通りになるかのぅ」


「俺の予想通り??」


「そうじゃ、お主に話すと決めたのも今日なら信じてもらえると思ったからじゃしのぅ」


「今日なら信じてもらえる?? いや、俺はちるの言う事なら大抵信じてる自信はあるぞ??」


「そ、そうなのか?? それはなんか嬉しいな……。 いや待て!! お主そもそも我の存在ですら疑っておっただろ!! 今更遅いぞ!! 

 いやいや、違う!! 今はそういう事を言っている訳ではないのじゃ!!

 えーと、その、わかるじゃろ??」

 

ちるは顔を少し赤らめいつもより大きなリアクションとってあたふたしてる。


 その姿を俺は少し可愛いと思ってしまう。

 ちるの言いたい事はわかっていた。 今日街に行ったのもちるが俺に力をくれたからだ。

 その実験を含めて俺は街に行ったのだし、更に結果は成功と言っても良いものだった訳だしな。 

 ちるをからかうの辞めるのは少し勿体無い気もするが続きが気になるし諦めて会話を続けよう。


「わかるよ。 つまりその二人、ソフィアとカミヤには何か特別な力、能力があったって事だろう??」


「そうじゃ!! 全く!! お主にしては察しが悪かったな??

 その通り彼等も本質的にはお主と同じ特別な能力を持っておったのじゃ」


「正直な、その可能性はちるに初めて会った日から考えてはいたんだ。 だけど考えれば考えるほど不可能な事に思うんだが??」


「何故じゃ??」


「俺と本質的には同じ能力と言ったよな?? 俺程度の力じゃどうあがいても神様を生み出すなんて事は無理だと思ったからだ。 例え何十人、何百人俺と同程度の奴が集まってもな。 

 ちるの話を聞く前はもしかしたら何百万人もそういった奴らが集まった結果、偶然に、いや、奇跡的に生まれた。 それが俺の最終的な予想かな。 まぁそれもありえないと思っているけどね。

 何百万人もそんな人間が居たとも思えないからな」


「はぁー、お主は相変わらず頭の中でごちゃごちゃ考えるのが好きなのじゃなぁ。 それにいつも最後の方はネガティブ思考じゃしな、でもまぁ鋭い所があるのは流石じゃな」


「ごちゃごちゃは余計だろ。 鋭いところってのはどこか分からないが、とにかく俺が言いたい事はその規模でも奇跡的な事をたった二人で出来るとは到底思えないって事なんだが??」


「まぁ、お主の言う事もわかるが、事実として我はこうして生まれたのだ。 信じてもらうしかないのぅー。 それに少し浅はかではないか??」


「浅はか??」


「そうじゃ。 そんな深く考えずともただ単に、お主の想像よりも二人の能力が途方もない程、強力だったって事じゃろぅ?? まぁお主の力はちっぽけ、いや、なかなか特殊ではあるし想像しにくいのは仕方ないかもしれないのぅ」

 

 ちるはニヤニヤしながら俺の反応を待っている。 その笑顔を見ればわざと言い直したのだと理解した。 

  

 想像もできない程強力な能力……一体どんなものなのだろうか。 続きが気になった俺は不本意ではあるがちるの望み通りの返しをする事にした。

 

「誰の能力がちっぽけだって??」


「おっと!! 聞こえていたのか?? これはすまんかったのぅ!! 

 すぐに言い直したつもりじゃったのじゃがなぁー。 まぁちっぽけな能力も使い道じゃ!! お主にもきっと世界を救う日がくるかもしれんぞ?? だからそんな落ち込むでない」


「落ち込んでないし、そもそも世界を救うなんて無理だよ。 俺に出来るのは精々頑張って自分の身を守るくらいだからね」


「それが出来るだけでも十分凄い事ではあるのだがのぅー。 まぁ我の両親と比べると些か部が悪いのぅ。 英雄だしのぅー」


「で、その凄い両親様は一体どんな能力者だったんだ??」


 ちるの両親自慢を流し俺は会話を本題へと無理やり戻す事にした。


 初めて聞く自分以外の能力者。

 その能力を聞くのが待ち遠しかったのだ。

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