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丘の中腹まで来ました。

この辺りは、道が平らになっています。

ロボットは止まって、顔を左に向けました。

そちらにも、小道が延びていました。

でも、

その小道は、すぐに行き止まりになっていました。

突当(つきあた)りの地面には、たくさんのシロツメクサ。

そこかしこで、

自分たちのご自慢の白い花を、ぼんぼりのようにニョキッと小高く掲げていて、

それらに混じって、

真っ黄色の花を咲かせた、背高(せいたか)ノッポのタンポポが1輪、

そして、

風に吹かれて揺れる、そうした白と黄色の花々の向こうには、

見晴らしの良い山野(さんや)の景色が、遠く遥かに広がっていました。


「ちょっと疲れたし、

 ここで、ひと休みしていこうっと」


ロボットは、

そう言って、その小道に入っていきました。



湿気った涼しい風が、びゅうびゅう吹き、

ロボットの頭の風ぐるまを、クルクル回しています。


「あ、ロボットさんだー。

 こんにちはー。

 行き止まりで何してるのー?」


後ろから声が聞こえてきました。

知らない声です。

ロボットは、後ろを振り返りました。


道の真ん中に、

自分よりもちょっとだけ大きな、ニンゲンの男の子が立っていました。

青の半ズボンに、白の半袖シャツ、

黄色と黒で小さな丸い耳付きの、トラの野球帽。


「こんにちは。

 えーっと、

 オイラ、ちょっとここで休んでるんだ。

 疲れちゃったからさ。

 ところで、

 それ、なに?」


ロボットは、

男の子の手元を見ながら、そう尋ねました。

男の子は、短い棒を持っていて、

その棒の先っちょには、

木の板で出来た、白いニワトリが乗っていました。

白いニワトリは、立派な赤いトサカ付きで、

尾羽は、

トサカと同じ色の、赤い大きなプロペラ。

風を受け、クルクルと回ってます。


「これ?。

 これはねー、風見鶏(かざみどり)

 風が今どっちから吹いてるか、すぐに分かるんだよ。

 ほら」


男の子は、そう言って、

手に持った風見鶏を、高く頭の上に掲げました。

上を向いた男の子の、視線の先で、

プロペラ付きの白いニワトリが、左右にフラフラと向きを変えていて、

金属が擦れ合うような、キィ・・・キィ・・・という音を、

辺りに小さく響かせています。


「ふーん。

 それ、買ったの?」


ロボットが尋ねると、

男の子は、

風見鶏を持った手を下ろして、言いました。


「ううん。

 昨日、おじいちゃんに貰ったの。

 わざわざ遠くから会いに来てくれたから、

 そのプレゼントだってさー。

 手作りだってー」


「ふーん」


「ねぇねぇ、ロボットさん」


「なに?」


「風ぐるま、好きなの?」


男の子が、

ロボットの頭の上の風ぐるまを見て、そう訊きました。

ロボットは、

少し間を置いてから、答えました。


「・・・いや、

 あんまり好きじゃない」


「何で?」


「・・・好きじゃないから」


「ふーん。

 でも、

 僕、似合ってると思うけどなぁ」


「似合ってないよ」


「そうかなぁ」


「・・・」


「ま、いいや。

 じゃあ、

 僕、もう行くね。

 バイバーイ」


男の子が、

そう言って、小道を引き返したときでした。

ロボットは、

あることを思い付きました。


「あ!。

 ねぇねぇ、キミ。

 ちょっと待ってよ。

 頼みたいことがあるんだけど」


左へ曲がり、丘を登ろうとしていた男の子は、

足を止めました。

ロボットの方を振り返ります。


「ロボットさん、

 なーに?」


「これから丘を登っていくんでしょー?。

 だったら、

 ついでに、オイラを後ろから押して登ってよー。

 疲れちゃって、あんまり動けないんだ。

 上に着いたら、

 キミに良いこと教えてあげるからさー」

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