4
丘の中腹まで来ました。
この辺りは、道が平らになっています。
ロボットは止まって、顔を左に向けました。
そちらにも、小道が延びていました。
でも、
その小道は、すぐに行き止まりになっていました。
突当りの地面には、たくさんのシロツメクサ。
そこかしこで、
自分たちのご自慢の白い花を、ぼんぼりのようにニョキッと小高く掲げていて、
それらに混じって、
真っ黄色の花を咲かせた、背高ノッポのタンポポが1輪、
そして、
風に吹かれて揺れる、そうした白と黄色の花々の向こうには、
見晴らしの良い山野の景色が、遠く遥かに広がっていました。
「ちょっと疲れたし、
ここで、ひと休みしていこうっと」
ロボットは、
そう言って、その小道に入っていきました。
湿気った涼しい風が、びゅうびゅう吹き、
ロボットの頭の風ぐるまを、クルクル回しています。
「あ、ロボットさんだー。
こんにちはー。
行き止まりで何してるのー?」
後ろから声が聞こえてきました。
知らない声です。
ロボットは、後ろを振り返りました。
道の真ん中に、
自分よりもちょっとだけ大きな、ニンゲンの男の子が立っていました。
青の半ズボンに、白の半袖シャツ、
黄色と黒で小さな丸い耳付きの、トラの野球帽。
「こんにちは。
えーっと、
オイラ、ちょっとここで休んでるんだ。
疲れちゃったからさ。
ところで、
それ、なに?」
ロボットは、
男の子の手元を見ながら、そう尋ねました。
男の子は、短い棒を持っていて、
その棒の先っちょには、
木の板で出来た、白いニワトリが乗っていました。
白いニワトリは、立派な赤いトサカ付きで、
尾羽は、
トサカと同じ色の、赤い大きなプロペラ。
風を受け、クルクルと回ってます。
「これ?。
これはねー、風見鶏。
風が今どっちから吹いてるか、すぐに分かるんだよ。
ほら」
男の子は、そう言って、
手に持った風見鶏を、高く頭の上に掲げました。
上を向いた男の子の、視線の先で、
プロペラ付きの白いニワトリが、左右にフラフラと向きを変えていて、
金属が擦れ合うような、キィ・・・キィ・・・という音を、
辺りに小さく響かせています。
「ふーん。
それ、買ったの?」
ロボットが尋ねると、
男の子は、
風見鶏を持った手を下ろして、言いました。
「ううん。
昨日、おじいちゃんに貰ったの。
わざわざ遠くから会いに来てくれたから、
そのプレゼントだってさー。
手作りだってー」
「ふーん」
「ねぇねぇ、ロボットさん」
「なに?」
「風ぐるま、好きなの?」
男の子が、
ロボットの頭の上の風ぐるまを見て、そう訊きました。
ロボットは、
少し間を置いてから、答えました。
「・・・いや、
あんまり好きじゃない」
「何で?」
「・・・好きじゃないから」
「ふーん。
でも、
僕、似合ってると思うけどなぁ」
「似合ってないよ」
「そうかなぁ」
「・・・」
「ま、いいや。
じゃあ、
僕、もう行くね。
バイバーイ」
男の子が、
そう言って、小道を引き返したときでした。
ロボットは、
あることを思い付きました。
「あ!。
ねぇねぇ、キミ。
ちょっと待ってよ。
頼みたいことがあるんだけど」
左へ曲がり、丘を登ろうとしていた男の子は、
足を止めました。
ロボットの方を振り返ります。
「ロボットさん、
なーに?」
「これから丘を登っていくんでしょー?。
だったら、
ついでに、オイラを後ろから押して登ってよー。
疲れちゃって、あんまり動けないんだ。
上に着いたら、
キミに良いこと教えてあげるからさー」




