3
ロボットは、
草原の中に続く道を、ゴロゴロと走っていました。
ブツブツ文句を言ってます。
「まったく・・・、
何だよ、こんな面倒な体にしやがって・・・。
これじゃ好き勝手に遊べないじゃないか」
そうして、しばらく進むと、
それまで心地よく吹いていた風が、段々と弱まってきました。
「マズイ、
このままだと、また動けなくなってしまうぞ。
誰か近くにいるヤツは・・・と、
あ、ラッキー。
ちょうどあそこにウサギがいるじゃないか。
おーい、ウサギさーん、
ちょっとこっちに来てくれよー。
良いモノあげるからさー」
ロボットがそう言うと、
草の中をピョンピョン跳ね、森に向かっていたウサギは止まりました。
頭を高くし、ロボットの方を振り返ります。
「あ、ロボットさん。
こんにちは。
良いモノって、なーに?」
「こっちに来たら教えてあげるー」
「分かったー。
じゃあ、そっちに行くー」
ウサギは、
ロボットの方へと、ピョンピョン跳ねていきました。
「ロボットさん、
さっき良いモノくれるって言ってたけど、
良いモノってなーに?」
ロボットの近くに来たウサギは、
期待に満ちた目で、そう尋ねます。
「あぁ・・・、えーっと、
あ、ホッペタが落ちそうなほど美味しい真っ赤なニンジンだよ。
朝、魔法使いから貰ったんだ。
秘密の場所に隠してあるから、それをあげるよ」
ロボットがそう答えると、
ウサギは、
そこら中をピョンピョン跳ね回って喜びました。
「わーい、わーい。
ロボットさん、ありがとう。
それで、秘密の場所ってどこー?」
「その前に、
ウサギさんにやってもらいたい事があるんだ。
それをやってくれたら、
ニンジンを隠した秘密の場所を教えてあげるよ」
「分かったー。
それで、何をしたら良いの?」
跳ねるのをやめたウサギが、
ウキウキした様子で、そう尋ねると、
ロボットは言いました。
「えーっと、
ほら、オイラの頭に風ぐるまが付いてるでしょ?」
「あ、ホントだー。
クルクル回ってるー。
それ、どうしたのー?」
「まぁ、それはどうでもいいじゃないか。
とにかく、
少しの間、この風ぐるまをふーふー吹いて、
回してほしいんだ。
それだけだよ」
「分かったー。やるやるー」
ウサギは、
そう返事をして、後ろ足で立ち上がると、
ロボットの頭に付いた風ぐるまを、
一生懸命ふーふーと吹き始めました。
ねずみ色をした風ぐるまが、
クルクル、クルクルと勢いよく回ります。
「おお、良い感じ。
その調子、その調子」
「ねぇ、まだー?」
「まだー。
もうちょっとお願い」
「分かったー」
「あ、もういいよ」
しばらくして、ロボットはそう言いました。
「まだー?」と「もうちょっとお願い」を3回も繰り返したあとでした。
「はぁはぁ、疲れたー。
で、
秘密の、場所って、どこー?」
息も絶え絶えに、ウサギが尋ねると、
ロボットは言いました。
「えーっと、
どこに・・・あ、
ほら、向こうの川の近くに、
立派なケヤキが生えてるでしょ?。
ほら、あの大きな木。
あそこの根元」
「わーい、ありがとう。
でも、
ここで、ちょっと、ひと休みしてから、
食べに、行こう、かな。
はぁはぁ・・・。
風も、吹いてきた、ことだし・・・」
「分かった。
じゃあ、
オイラ、もう行くから」
「じゃあねー」
ウサギが、
走り出したロボットの背中にそう言うと、
ロボットは、
何も言わずに右手を上げ、それをゆっくり振って、
そのまま去っていきました。
分かれ道のところに来ました。
ロボットは止まって、
それぞれの道の行き先を確かめます。
「えーっと、
こっちは森で、こっちは丘・・・。
森の中は、木に遮られて風があんまり強く吹かないだろうし、
こっちの、丘の上に続く道にしようかな。
テッペンは、風が気持ち良いそうだし。
それにしても、
まったく、面倒くさいなぁ・・・」
そう言って、
丘の方へ延びる道を、ゴロゴロと走り始めました。
丘の麓の、大岩の近くを通ったときです。
体の動きが、ちょっと鈍ってきました。
風も、吹いたり吹かなかったりしていて、
何だか頼りない感じです。
「はぁ・・・。またか・・・。
念のため、
誰かに風ぐるまを吹いてもらわないと。
えーっと・・・、
あ、
あっちの方からキツネがこっちに向かってきてるぞ。
ラッキー。
おーい、キツネさーん」
ロボットが呼びかけると、
キツネは、
ロボットをチラリと見て、下を向き、
ため息をつきました。
そして、
黙って、ロボットの方へ歩いていきました。
「・・・なに?。
オレに何の用?」
キツネは、無愛想に尋ねました。
ロボットは言いました。
「あぁ・・・、
えっと、さっきそこで、
とっても良い匂いのする、きれいな花を見付けてさ。
その花が咲いてた場所を教えてあげようかなぁ、って」
それを聞いたキツネは、
下を向き、ため息をつきました。
そして、顔を上げると、
「だから、
その花の場所を教えてあげる代わりに、
頭の風ぐるまを吹いてくれ・・・って言うんだろ?」
ロボットは、
目を丸くして(まぁ、元から丸いんですが)驚きました。
少し間を置いてから、訊き返します。
「・・・どうして分かったの?」
キツネは答えました。
「お前、
今日、色んなヤツを騙して、
頭の風ぐるまを吹いてもらっただろ?。
みんな、カンカンになって怒ってさ・・・、
今日という今日は許せない・・・って、
魔法使いさんのところへ、文句を言いに行ったんだ。
そしたら、
お前の代わりに魔法使いさんが頭を下げて、
それで、ついでに教えてくれたんだよ、
・・・お前の頭にある、その風ぐるまのことを」
「・・・」
「悪いけどさ、
オレは、お前の風ぐるまを吹いてやらないから。
ウソばっかりついて、
みんなを困らせているお前のために吹きたくない。
動けなくなっても、
風が吹けば、また動けるようになるんだろ?。
それでいいじゃないか。
気長に行けよ。
じゃあな」
キツネは、
そう言って、去っていきました。
ロボットは、
そのキツネの背中を、黙って見送っていましたが、
少しすると、
「ふん!、
誰がお前の力なんか借りるもんか!」
と言って、
丘の方へ、プイッと向き直し、
ゴロゴロと車輪を転がしながら、丘のテッペンに続く道を登り始めました。




