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プロローグ

俺、赤羽あかば 勝郎かちろうは、その日急いでいた。


両手にはパンパンに膨らんだ買い物袋と、後ろのリュックにもたくさんの調理器具や材料が入っていて一歩進むたびに膝やふくらはぎが悲鳴をあげている。しかし、そんなことを気にしている余裕などない。家に帰ったらすぐに作業に取り掛からなくてはいけないからだ!


そう。明日はバレンタインデー! チョコレートボンボンに、パウンドケーキ、クッキーにマカロンなど、大量にチョコレート菓子を作って会社に持っていかなくてはいけないのだ。


今日は徹夜かなぁ...。お菓子を作るの自体は好きだから構わないんだけど、流石にこんなに作るのは無理があるよ...。


「あれ、こんなとこに小道あったかなぁ?」


近所のスーパーを出て家まで戻る道。雑居ビルとビルの間に奥が見えない小道が伸びていることに気づいた。小道に並ぶ木々の間には提灯が灯っており、奥になにがあるかまではこの位置からは見ることができない。


「のぼりも何も立っていないけど...お祭りかなんかやってるのか?」


重たい荷物を抱えてはいるものの、この小道の奥で何が行われているのかは少し気になるところだ。家まではあと5分もしないで着く距離だし、少し寄り道するくらいはなんてことない。


「行ってみるか...」


砂利をかくように小道の奥へと足を進めて行くと、数メートル進んだところですぐに奥に何があるかが見えてきた。


「釜..、だよなぁ?」


そう、そこには小さな社とその前に鎮座していたのは自分の背丈ほどある大きな鉄釜だった。もしかして芋煮会とかそういうイベントでも行うのか? それにしてはちょっとスペース狭すぎないか? そんなことを考えながら鉄釜の周りをぐるぐると巡ってみる。するとちょうど後ろ側に木で作られた小さな階段があることに気づいた。


「お、これに上がれば中が覗けそうだな」


これの中がどうなってるか見たら、もう切り上げてさっさと帰ろう。そう思い、ゆっくりと数段登り釜の縁から中を覗き込む。やっぱり中は空っぽで中には何もない。というか...。


「底が...ない?」


そう。通常あるはずの釜の底がなく、中には真っ暗な暗闇が広がっているだけだった。

え、これどうなっているんだ? これじゃあ芋煮れないじゃん...。

そんなことを思って中を深々と覗き込んでいると...、


ドン!!!!!


背中を急に押されて、俺は体ごと中に飛び込む形となった


「え!!!!????? うわっ!うわぁぁぁぁっぁっぁぁぁっぁぁっぁ!!!!」


ツルツルとした釜の壁面をまるで滑り台のように俺は腹ばいで滑り落ちて行く


「落ちる落ちる!!!無理!無理!うわーーーーー!!これ、どこまで続いてるんだぁぁぁぁぁあ!!!!?????」


暗闇の中には俺の声だけが木霊して響いていくだけだった。

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