7号機 特殊訓練場
特殊訓練場、先日の訓練場より広い場所で、本格的なビルや樹木などが設置されている。
俺とミナミはそんな場所に来ていた。
「こんなとこもあったのか…」
「地下施設だから地上からだとわからないしね。ちなみにここはニホン政府も知らない極秘施設だから、くれぐれも他言無用でね」
すごい軽い口調で言われたが、超重要なことを言われた気がする。
「さ、無駄口はこの辺にして、とりあえずあんたの実力見せてよ。設定はハードで制限時間は3分、少しでも多くの標的を破壊すること。準備はいい?」
「いつでもいける」
俺は右手にライトニング、左手にリベレーターを構えた。
「ほう、なかなか面白い構えをするんだね。それじゃ始めるよ…スタート!」
合図と共にロボットが複数体出現した。サカキとの訓練とは比にならないほどの数だ。
俺は確実に、かつ慎重に標的を撃っていった。しかし、ライトニングは最低一分の冷却時間が必要だし、リベレーターも20発撃ったらリロードしなければいけない。どちらも使いやすい武器ではあるが、相手が複数の場合はどうしても手間取ってしまう。
連射力のあるリベレーターをメインにしたらいいのだろうが、それは何となく嫌だった。そう、何となく。
「…そこまで!」
「はぁ、はぁ…キッツ…」
さすがハードモード、他のことを考えながら戦うのは流石に無理があったようで、後半はほとんど攻撃できなかった。
「あんた、てんでダメじゃない。慣れもしないのに二丁持ちするから隙が生まれてる。ましてライトニングを持った状態での二丁持ちなんて手練れでもなかなかやろうとしないわよ。それにリベレーターのリロードも片手じゃ難しいだろうし、どちらか一本だけに絞った方がいいと思う」
うわぁ…思った以上に酷評だ…
「でも…」
「まだ何かあるのか?」
俺は恐る恐る言葉の続きを促した。
「多分リロードの問題はマガジンポーチを工夫したら何とかなるだろうし、それさえ何とかできれば問題ないと思う。それでも、相手の数に応じて使い分けをするってことは考えた方がいいよ。二丁持ちは同じものを持つか連射速度が同じくらいのものを使った方がいいよ」
たった3分間でここまでのアドバイスが出てくるのは、それだけ見てくれているっていうのもあるけど、それ以上に本人に知識や実力がないとできないことだろう。
「あの、ミナミの戦い方も見せて欲しいんだけど」
「そのつもり。設定をデスに変更してもらえる?ハードボタンを5回押したら点滅すると思うから」
俺は言われた通り、設定を変更した。
「デスって…ハードよりハードってことだよな…大丈夫なのか?」
「今心配したことを3分後には後悔していると思うから。始めて」
「お、おう…それじゃ、スタート!」
俺の時と同じように、合図と同時にロボットが大量に出てきた。多分俺の時の3倍くらいはいるだろう。
ミナミは薙刀と小銃を使うと言っていたが、その手には薙刀しか握られていない。
「あれでどうやって戦うんだ…?」
俺は固唾を吞んで見守っていた。するとミナミは突然標的に向かって走り出した。
「おいおい、そこは密集地帯…そんな突っ込んだら…!」
だが心配は無用だったようだ。
ミナミは薙刀を回すように振り、次々と標的を斬っていった。それだけじゃない、離れた場所の標的は腰のホルスターから小銃を瞬時に取り出し、正確に撃ち抜いて見せた。
圧倒的な力の差を見せつけられた俺は、ただ唖然とするしかなかった。
「そ、そこまでっ!」
終了の合図を聞き動きを止めたミナミは、息切れもなくこちらに戻ってきた。
「どうだった?私の動き、少しは参考になりそう?」
「いや、参考どころか動きが速すぎて後半全然目が追いつかなかった」
「まぁ、そりゃそうか」
だが、確かに凄腕だということだけはわかった。
「ミナミがそれだけ強いなら、俺と組む必要なかったんじゃないのか?」
「何いってんのよ、私が求めているのはあんたの戦闘力なんかじゃないの。ちょっとそのライトニング貸して」
俺はライトニングをミナミに手渡した。
ミナミは何かをいじってるようだが、俺には何をしているのかさっぱりわからなかった。
「これで多分大丈夫。戦闘中に考えたんだけど、ライトニングって動力は電気だしちょっといじれば出力変えられると思ったのよ。案の定小さくも大きくもできるようになってた」
「えっと…つまりどういうこと?」
「にぶちん…ようするに出力を小さくして冷却時間を短縮すんのよ」
なるほど、と相槌を打ってはみたものの、ちゃんと理解できていなかった。
「あ、でも出力を抑えたってことはその分威力も落ちてるから、カンジを掴むために試しに何発か撃ってみて」
ミナミはそう言いながらロボットを数体出した。
「カンジを掴むったって、そんなに変わるもんか…?」
出てきたロボットを一体ずつ撃つ…つもりだった。
「あ、あれ…?」
間違いなく引き金を引いたはずだが、標的であるロボットは無傷だった。
「ミナミ、これ…」
「見えないだけでちゃんと届いてたよ。ただ、多分狙った場所とは違うところに当たってるね。あんたが狙ったの心臓あたりでしょ?肩のところ見てみな、焼け跡がついてるよ」
よく見ると、確かに肩に焦げのようなものがついていた。
「動作確認よし、だね。問題は座標計算かな。もう少し撃ってみてよ」
それから俺は、あぁでもないこうでもないと言いながら、小一時間ほどライトニングの慣らしをしていた。
「お疲れ、だいぶ良くなったじゃん」
「ありがとう。でもやっぱり難しいな、殺傷力もなさそうだし」
威力が落ちている分、以前のように的を破壊することができなくなっていた。
「そんなに心配することないよ。実際のアンドメイドを撃てば、ライトニングの本当の力がわかるから」
「本当の力…?」
俺は頭の上にハテナを出して首を傾げたが、ミナミが答えを教えてくれるはずもなかった。
「そんじゃ今日の訓練はこれにて終了ってことで、部屋に戻ったら充電と充填しておくこと。いいね?」
「お、おう」
「あ、それと…」
訓練場を出ようとした時、ミナミに呼び止められた。
「ちゃんと大浴場は確認をしてから入るようにね」
「わ、わかってるよ!」
こいつ…絶対性格悪い。