6号機 関西支部のミナミ
あれから俺は風呂に入り晩飯を済ませ、自室に戻って休んでいた。その時、ノックの音が聞こえた。
「はーい、どうぞ」
扉を開き入ってきたのはカガミだった。
「遅くにすまない。礼を言おうと思ってな」
「礼なんて言われることしてないよ。俺はただこんなくだらない戦争をさっさと終わらせたいだけだし」
「それでも、戦力の強化に協力してくれたことに感謝する。本当にありがとう」
頭を深々と下げるカガミに、俺はたじろいでしまった。
「頭を上げてくれ。俺はまだ何もしていないんだし、礼を言うのは早いよ。それに、俺が戦力になるかなんてまだわからないんだし」
「そんな謙遜することないさ、君の訓練での成績は聞いている。我々も目を見張るものだったよ」
なんかすごい期待されているみたいなんだが…俺にとって重圧にならないか心配だ。
「すまない、長話が過ぎたようだ。君も疲れただろう、今日のところはゆっくり休んでくれ。あぁ、それと明日なんだが、顔合わせを兼ねて緊急会議をすることになった。君も参加してくれ」
カガミはそう言って俺の部屋から出て行った。
「顔合わせか…どんな人がいるんだろうな」
俺は期待と不安を胸に抱きながら、床についた。
翌朝、俺は予定よりも早く会議室に来ていた。
「こういう時って、なぜか早く来ちゃうんだよなぁ」
「一番乗りとは感心だな、ヒュウマ君」
やってきたのはサカキだった。
「サカキも早いな。会議が始まるまでまだ時間あるけど」
「一応幹部だからな、早めにきて準備をしなければいけないんだ。そういうヒュウマ君も早いじゃないか」
よく見るとサカキの手にはいろんなものが持たれていた。
「俺は落ち着かなくて…」
「そうだな、初めての時はみんなそんなもんだろう。私なんて緊張で眠れなくて遅刻してしまったがな」
しっかり者に見えて意外と抜けているところがあるみたいだ。
「その遅刻癖は今も変わらないでしょ、サカキ」
「げっ、あんたなんでここにいるのよ」
いつの間にか会議室に入ってきてたのは、昨日大浴場にいた女性だった。
「なんでって、幹部のあんたが聞いてないわけないでしょ」
「聞いてないわよ!」
俺は話についていけず、完全にキョトンとしていた。
「ごめんごめん、置いてけぼりになってたわね。こいつはアンチロイド関西支部のミナミだ」
「昨日はどうも」
あ、今なんか睨まれた気がする。
「何だ、もう面識があったのか」
「面識があったというか…」
「全裸を見られた」
ミナミの発言に開いた口が塞がらなかった。選りに選ってそのことをチクられるなんて思わなかった。
「あぁ、やっぱり…ヒュウマ君、ドンマイ」
「今やっぱりって言った!?」
「気にしない気にしなーい」
しばらくすると、続々とメンバーが集まってきた。
「みんな集まったようだな。それじゃあ緊急会議を始める」
最後に入ってきたのはカガミだった。
「早速だが我がアンチロイドの新入りを紹介しよう。ヒュウマ、前へ」
「き、聞いてねぇよそんなの…」
何の打ち合わせも無しに突然みんなの前に出るよう促された俺は、全力で首を横に振った。
「大丈夫、名前と使用武器を言うだけでいいから」
「そんなのでいいのか…」
隣に座っていたサカキに耳打ちされ、俺は渋々前に出た。
「えっと、ヒュウマです。メインはライトニング、サブはリベレーターです、よろしくお願いします」
言われた通り、いたって無難な自己紹介をして席に戻ろうとした時、場の空気が乱れていることに気づいた。
「今ライトニングって…」
「リベレーターをサブに持つなんて…」
何やらザワザワしているが、俺何かまずいことでも言ったのか…?
そういや、サカキもライトニングはお目が高いとかリベレーターはサブにはもったいないとか言ってたっけ。でも、そんなにザワつくほどなのか?
「へぇ、あんた本当にすごいやつなのね。まぁ持ってるだけで使いこなせないと意味ないんだけどね」
「どう言う意味だ?」
「まぁまぁ、時間もあまりないから次に行こう」
ミナミがボソッと言った言葉が引っかかったが、サカキに遮られてしまった。
「次は関西支部から異動になったミナミだ」
「ミナミです。知ってる人もいると思いますが、薙刀伊邪那美と小銃軻遇突智使ってます。よろしくお願いします」
伊邪那美に軻遇突智…日本神話に出てくる神様の名前だけど、なんか名前だけで凄そうだな。
「新入りたちの紹介も終わったところで、本題に入る。本日よりツーマンセルを組んでもらう。組み合わせは君たちに任せる」
「ツーマンセルって何だ?」
俺は聞いたことのない用語をサカキに小声で聞いた。
「二人一組って意味よ。セルっていうのが班とかって意味なの」
「へぇ…んじゃ俺は誰と組んだら…」
ど新人が二人一組を組もうなんて、誰も相手にしてくれないんじゃないかと思っていたが、その心配は全くなかったようだ。
「君、俺と組まないか?」
「いいや私と組んでもらうのよ!」
「僕が先に目をつけてたんだから割り込まないでよ!」
これが世に言うモテ期ってやつかな?(違います)
俺はその場にいたほとんどの人から誘いを受けた。まさかの事態にあたふたしていると、ミナミに腕を引かれた。
「みんなごめんね、こいつ私が予約してたから」
「えっ、ちょ…えぇ…」
「なに、嫌なの?」
困惑する俺の声を聞き、ミナミはすごい顔をして俺を睨みつけた。
「い、いいえ…嫌じゃないです…」
ミナミってなんか怖いんだよなぁ…顔は可愛いんだけど。
10分ほど経った時にはほとんどがツーマンセルを組み終わっていた。
「よし、あらかた決まったみたいだな。次の出動から今隣にいる相方と行動を共にしてもらう。何なら床を共にしてもいいんだぞ?」
残念ながらカガミの冗談はウケなかったようだ。会議が始まってから一番静まっていた。
「ゴホン…えぇ、冗談はさておき、組んですぐに連携が取れるわけでもないだろう。今から各自自由訓練とする」
「そうと決まったら早速訓練するわよ」
「お、おう!」
完全にミナミのペースに飲まれていた。もうこうなったらどうにでもなってしまえってんだ。
俺は半ばやけくそになっていた。