その二
キョウコは目を覚ました。
真っ白な天井が見える。
「……」
気怠い体を起こすと、窓から夕方のオレンジの日差しが入り込んでいた。
(手術、終わったんだ……)
ガチャリ、と扉が開くと、トレーを持った看護婦が現れた。
「キョウコちゃん、手術成功だって。 良かったね!」
トレーの上には、消化の良いおかゆが乗せられている。
ぐう、と腹の虫が鳴る。
「食べても、いいですか?」
「遠慮しないで食べて。 お腹すいたでしょ」
おかゆを食べながら、キョウコは看護婦の話に耳を傾けた。
手術は成功で、あと数日は経過観察を要するとのことだ。
皮膚が馴染むのを待って、包帯が取れるようになるのは数週間先の話になるらしい。
「皮膚が元に戻れば、歩けるようにもなるから。 リハビリ大変だと思うけど、頑張ろーね!」
「……うん」
それからまたしばらくは寝たきりの生活。
毎日ムロからおはよーラインが届くが、ロウからは殆ど連絡は無かった。
最近、キョウコは漫画を書くことにハマっている。
看護婦が気分展開にと勧めた「大人の塗り絵」、がリハビリとして効果を上げ、元々趣味だった漫画を書ける所まで、機能が回復した。
「何書いてるの?」
「あっ、これは……」
キョウコが書いてるのは、ロウを主人公にした刑事ドラマで、氷の殺人鬼、という敵を追うシーンを執筆中だった。
「へぇ~、中々男前な主人公ね」
キョウコのフィルター越しのロウは、少なく見積もっても5割増しのイケメンである。
すると、ラインの着信が入った。
(ロウさん!?)
慌てて携帯をチェックするも、相手はムロ。
内容は、手術の成功祝いに映画に行こう、というものだった。
あまり気乗りしなかったキョウコであったが、ふと、あることを思いつく。
(……そうだ。 ムロさんなら、ロウさんの近況を知ってるかも)
それに、映画の誘いを断り続けるのも良くない。
キョウコは、良ければ明日、都内の映画館に見に行かないか、と返事をした。