その一
かぐや月姫女学園で起きた殺人事件の犯人、黒闇キョウコ。
彼女は、自分をいじめていた生徒グループ4人の内、2人を殺害したことにより、懲役35年の刑を言い渡されていた。
しかし、いじめられていた際に負った全身火傷により、その傷が完治するまでは刑の執行は延期という形になった。
その日は、彼女の皮膚移植の日であった。
これが成功すれば、全身に巻かれた包帯をようやく取り除くことができる。
(でも、もし失敗したら……)
移植した皮膚が拒絶反応を起こすケースは少なくない。
その場合、死に至る可能性もあり、医者は手術の推奨はしなかった。
それでも、彼女は皮膚移植の決断をした。
(……必ず、成功させる)
そこには、ある一つの思いがあった。
犯行を終えたらキョウコは自殺するつもりであった。
しかし、その計画はロウによって潰される。
初め、キョウコは苛立ったが、時間が経過するにつれ、犯行を完遂しなくて良かったと思うようになった。
(あの人がいなかったら、本当の闇に落ちていたかも知れない……)
キョウコにとって、ロウは闇から救い出してくれるロウソクの火であった。
ある日、キョウコは美術館に行きたいと言い出した。
美術が好き、というのもあったが、その実、ロウとデートに行きたかった。
そして、ロウがキョウコにたこ焼き(ピザポテト味)を買ってきてくれた。
キョウコの脳内に、桜の花びらが舞った。
(これが、恋……)
初恋は、ピザポテトのチーズの味がした。
彼女は決意した。
手術が成功したら、ロウに告白する。
手術まで、あと15分。
「……あれ」
気がつくと、ラインの着信があることに気がついた。
一瞬、キョウコの胸は高鳴った。
しかし、ラインを送ってきた相手は、ムロであった。
おはようです!w
私事ですが、マリファナ・フレンズの第3話を見ました。
やはり作画が神がかっております。
声優の演技も…… 以下略
少々話が長くなってしまい、申し訳ないですw
そういえば今日は手術の日でしたな。
成功したら一緒に「fate」の映画を見に行きませぬか?
では、ご武運を!
(ムロさん、か)
少し、ガッカリする。
「……ダメダメ、ムロさんだって、大事な友達だし」
キョウコは、気を取り直し、いいですよ! とラインの返事をした。
正直、ムロはキョウコの好みでは無い。
それでも、自分を外へと連れ出してくれる数少ない友達であって、邪険に扱うなど、自分は何様だと戒める。
「キョウコさん、そろそろ手術、始めるよ」
看護師が病室に入ってきた。
「は、はいっ」
心臓が喉元からせり上がりそうだ。
でも、これを乗り越えれば、光に満ちあふれた世界への扉が開かれる。
ロウからの連絡が無いのが気がかりであったが、キョウコは車椅子を走らせた。