8話 職種
遅くなりましたゲーム面白い
今日はノアとニアを訓練所に送った後、書庫に来ている。
どうしても知りたいことがあったからだ。
職業について乗っている本を探して開いてみるとびっしりと文字がつづられていて目が痛くなりそうだ
案の定最初に書かれている職業は勇者だ。
「勇者」
「魔王」と対になる職業。
高い筋力と高い魔法耐性を持つ職業で、1対1または複数対1の対少数に特化しているステータス構成、スキル攻勢をしている。
「勇者」の職業の者は特殊な魔力を垂れ流しているといわれており、その魔力に長時間触れている人物はステータス値や技能が非常に伸びやすくなるといわれている。現に英雄バザークは当代の「勇者」と非常に仲が良く常に一緒に行動していたため、召喚者ではないものの勇者に匹敵するだけの能力を得ていたという。
魔王討伐後は表舞台にあまり出てこないため、本当はいないのではないかともいわれているが実際は教会で修練を積んでいる。
竜と魂生契約をし、魔王討伐後は国に帰属する「竜騎士」と違い魔王討伐のためだけに神と一時契約という時間制限はある分その期間内であれば生物の域を超えた能力を得る。という形のため魔王討伐後は常人より高い能力を持っている程度の力しか発揮しない勇者だが、万が一竜騎士が帰属した国と結託し悪事を行おうとした場合「聖女」の祈りにより「聖女」の命と引き換えに「竜騎士」を殺すまでの間力を得るという一時契約を行う。
そのため教会では竜騎士殺しや調停者と呼ばれたりもする。
スキル 勇者の証に魔王特攻、全魔法適正、光魔法特化、剣人一体、感情抑制 等々
勇者の力に正義執行、断罪執行、無慈悲な斬撃 等々
勇者のスキルは剣を扱うことに特化しており、その道に関しては超一流の卓越した技能を見せる。超近距離~近距離に対し高い能力を発揮するものが多い。
そのため中距離~遠距離範囲魔法に特化している魔王とは相性が非常に悪い。
耐久力に優れる竜騎士などが盾がわりに勇者を接近させとどめを刺す、という場合が多い。
・・・俺は肉壁だった。
「聖女」
「聖女」はワ国の「巫女」と対になるとされる職業で、勇者召喚直前からしか存在しない職業になる。
聖女はもともとは神聖術が年の割に秀でている少女たちに送られる’称号’として作られた。
神聖術は1位から6位までの明確な難易度があり、15歳以下で4位までの神聖術を行使できると聖女という称号を授けられる。
この神聖術、実はいくら努力しても上達はしない。教皇などが老父や老婆しかいないのにも関係してくるのだが、信仰の強さが効果を強くしたり高い位の神聖術を使えるようにするため、祈り続けた時間の合計が神聖術の強さに比例する。そのため成人の15歳で4位の神聖術が使えると言うことは脅威なため、聖女という称号を与え、保護することによって悪質な人物、集団の手に渡ることを防いでいる。
「聖女」は、生まれた当初は「神官」の職業を与えられ、最初の神託を受けると同時に職業が「聖女」に変わる。
スキル構成については’聖女の証’と’聖女の力’というのがあることまでは公開されているのだが、それ以上の細かい内包スキルについては一切公開されていない。
「聖女」は神託を受けることが出来る唯一の人間とされており、神託として女神から神力を授かり、それを勇者に与えることで魔王討伐後に1度だけ超人的能力を授けると言われている。
ただこの神力の譲渡、神力自体が「聖女」の魂に結び付いた状態で生まれてくるため、譲渡と同時に「聖女」の生命維持に必要な神力まで譲渡してしまい、結果的に「聖女」の命を奪うことになってしまう。
「聖女」と夫婦であったり、恋人であったりする「勇者」は竜騎士討伐後、人の身では抑えきれない量の神力と最愛の女性の死とが合わさり廃人のようになってしまうことが多い。
そのため「聖女」と「勇者」を同時に失うことになる竜騎士暴走を未然に防ぐため教会は裏で、竜騎士を悪行に走らせそうな人物を秘密裏に排除しているとされている。
「竜騎士」
「竜騎士」は「飛竜乗り」の上位互換の職業として女神に作られた職業になる。
実のところ、「勇者」や’聖女’よりもはるか昔から存在するとされる職業で、上のエルフ、森のエルフ、砂のエルフ、の特に森のエルフでは厄災を招くと言われ忌み嫌われている。
「竜騎士」は「勇者」と違い、ドラゴンと魂生契約を行うため、ドラゴンと人間の間に位置する存在になるとされている。そのため寿命が非常に長くなり数百年生きる。あまりに長寿なため1時代に2人の「竜騎士」がいるということも起こったほどだ。
そして契約後の「竜騎士」の特徴として、自分の所有になった者、また物の能力の一部を自分の物にできるという特性があるとされている。
これは強欲の魔獣といわれるドラゴンの特性と似通っており、多大な金銀財宝を所有しているドラゴンは非常に美しく、多数の配下を従えていると強くなるという
これは「竜騎士」にも同じことが言え、「竜騎士」が勇者一行の近くにいる場合といない場合では「竜騎士」の能力に開きがあるという報告もある。
「竜騎士」は「飛竜乗り」と同じく空間魔法が使える数少ない職業でこの空間魔法は契約する飛竜やドラゴンの生活に必要な食料などを持ち運ぶためといわれている。ただここで「竜騎士」が「飛竜乗り」と違う部分は「飛竜乗り」は最初から5mx6mx5mの亜空間を作れるのに対し、「竜騎士」は10センチ四方の立方体程度と大きさに差があり「竜騎士」の亜空間の大きさは鍛錬によって大きくなるということだ。
そのため勇者一行の軍行に必要な資材を運ぶという重大な認と上記の特性合わせて、勇者一行のリーダー的存在になるため10代後半の「勇者」達とは違い20代半ばという高齢の男性が選ばれる。
スキル 竜騎士の証に闘器全優、全魔法適正、感覚遮断、各種耐性、竜種特攻 再生能力上昇 単独行動 等々
竜騎士の力に竜牙、竜爪、竜鱗 等々
「勇者」は剣人一体という剣の道に関しては超一流になれるのに対し竜騎士は闘器全優。無手で戦うことを指す’闘’、すべての武器を示す’器’というすべてに対して一流になれるほどの才をまとめたものを与えられている。
これはドラゴンと別々で戦う場合は剣、ドラゴンに跨り地上で戦う場合は槍を、ドラゴンに跨ったまま空を舞う場合は弓を、とすべて等しく必要になる場合が多いため、無手に関してはドラゴンと戦う場合剣や槍といったものが利きにくいため、ドラゴンと契約をするために屈服させる時、長期戦になり武器を消耗して戦うすべがない、ということを避けるためとされている。
だが歴史上でドラゴンに単独で挑み、長期戦になったという記録は無い。すべての竜騎士は仲間を連れて複数対1という有利な状況下でドラゴンに挑んでいるため、長くても半刻程度で決着がついているため無手での戦いをした者はいない。
竜騎士というのはPTみんなでドラゴンをフルボッコにしないと契約できないような弱い職なのだろうか、そんなことを思ったけどそんなはずはないと思う。だってそれならわざわざ竜種特攻や単独行動なんてパッシブスキルついているはずがない。
明らかに歴代の竜騎士の能力不足と過保護な思考が原因だと思う。
そんなことを考えながら竜騎士のスキルをのぞいてみると、ついさっきまで記載されていなかったスキルが記載されている。
不安だ。この竜騎士の証や力にはまだわからない内包スキルがいっぱいあって、もしそれが必須スキルだったたら、どうなるんだろう。例えばドラゴンとの契約に必要なスキルだったり、あるとわかっていてもどんな名前かはわからない。
単独行動なんて、契約後は死にスキルだろう。
不安だ。
この本に関しても穴だらけだ。なんでスキルを全部書かずに等々なんて区切ったり、魔王討伐後の勇者は対竜騎士の兵器みたいなことを書いてあるのに、勇者の寿命については全く触れていない。勇者が死んだ後に竜騎士が悪さをしたらどうするのか、それか万が一俺みたいな竜騎士に読まれてもうかつな行動がとれないようにあえて書いていないのか。
なによりなぜ魔王のステータス構成を知っているのか、相手のステータスを除くことが出来る魔法や、スキルがあるという可能背は十分以上にあるけど、それなら納得がいく。
でももし俺が今考えていることが当たっていたら・・・そう考えているとふと視線を感じステータスプレートを慌てないように注意しながら商人のものに変更して顔を上げる。
そこにいたのはレイナ姫とそのメイド兼護衛の女性だ
「なにをそんなに真剣に読んでいらっしゃるのですか?」
「職業について書いてある本があったからそれを読んでるんですよ」
そう動揺を隠すように笑顔を張り付けた顔で答える。
「ロールについて書かれている本・・・ですか? 私も見せていただいても?」
そうレイナ姫は聞いてくるが、断られても見る気満々なようでテーブルの向かいまで来ている。
「ええ、構いませんよ」
「! そうですか、では」
レイナ姫は俺が了承すると満面の笑みで隣に腰掛ける。
正面に来ていたものだから一度この本を読むのをやめて渡すべきかと考えていたんだけど、迷い一つなく隣に座ったことを考えるともともとそのつもりだったのだろう。
レイナ姫が隣に座ると同時にスッっと鋭くなった護衛の女性の視線に内心冷や汗をかきながら、本をレイナ姫に見やすいように傾ける。
「なるほど、とても詳しく書いてあるのですね、とても厚い本ですし私のロールについても書かれていたりするのでしょうか・・・」
そう言いながら目を通すレイナ姫の表情がだんだん硬くなり始める。
「レンカ様はどこまで、目を通されたんですか?」
そう尋ねられ、どこまで読んだか教えるとそこまで読んだレイナ嬢は青ざめた表情で、
「この本、お借りします」
と言い本を持って行ってしまった
まあ、確かに踏み込んだ内容がやけに多かったからあの反応も当然なのかもしれない。
面倒ごとにならなければいいけど・・・
そんなことを考えながら会釈したレイナ姫のメイドに会釈を返すと、入れ替わるようにしてセレナが書庫に入ってきた。
そろそろノアとニアの訓練が終わるからお昼一緒に食べようという誘いだった。