5話 始まり
だいぶ間が空いてしまいましたが更新です。
書く内容はかなり先まで決まっているのですがちょっとした変更などを脳内妄想しているとどうしても時間がすぐすぎてしまいますね
お姫様が俺の部屋に来てから6日がたった。
ほとんどの子たちの指南役たちが王城に到着し、顔合わせを済ませてる中ノアとニア、あとセレナには指南役がいない。
セレナの職業はエルフの一部の人物しか持っていない特殊な職業なため指南役が人間にはいない。それとこの国に一番近いエルフの里は人間嫌いで非常に残虐ということで有名なのだそうだ。次に近いエルフの里は竜王山脈という北部に広がる馬鹿みたいにデカイ山脈を越えた向こうで、次に近いのが大陸の反対側だそうだ。
ノアとニアは指南役になる人物が来たのだが、非常にいかついまさに歴戦の戦士!!といった風貌の男性だったため怖がり、泣き出してしまった。そのため少し時間がかかるが女性の達人を呼ぶそうだ。
顔見てガン泣きされてる彼らは悲しそうな顔をしていて少し心が痛んだ
俺はというとこれからリーヴェン商会というこの国有数の商会の人物とこれから会いに行く。
リーヴェン商会はこの国が始まってすぐに設立されたかなり歴史ある商会で、王室御用達の商会だそうだ。質がいいものを薄利多売で売り一般国民にも信頼されており、その利益の一部で孤児院を経営していたり、私塾のようなものを開いたりしてかなり多方面に手を伸ばしている大商会だそうだ。
国としても非常に信頼のおける商会の一つと紹介された。
案内された部屋に入ると1人の少しぽっちゃりした男性と、その隣に秘書風な男性が豪華な椅子に座っている。
「こんにちわ、紹介に与りました。リーヴェン商会の会長トーマス・リーヴェンと申します。こちらは私の秘書、アドルフです。」
そう言いながらトーマスさんとアドルフさんは椅子から立ちあがりお辞儀をする。
「さっそく社交辞令と行きたいところですが、召喚者の中に商人がいると聞いてワクワクしていたのですよ。なので社交辞令は抜きにして本題に入らせていただきたいのですが、いかがでしょうか?」
そうぶっちゃけながら話すトーマスさんの目はすごくキラキラしてて、びっくりする。
まあ社交辞令なんてめんどくさいこと抜きにできるなら俺としても嬉しいんだけどね
「ええ、全然かまわないですよ」
「では早速ステータスプレートを見せていただくことは出来ますでしょうか?
もちろん他者に勝手に話さないよう契約をさせていただきますので、ご安心ください」
そう言いながらトーマスさんは長文が書いてある羊皮紙を差し出してきた。
内容は、俺のステータスプレートを見るが、トーマスさんとアドルフさん以外には許可なく内容を話さない、もし話した場合2人のそれぞれの私財の半分を俺に無償で譲渡する、というのと俺の望む権利を4つ、2人の家族のうち最大2人ずつを奴隷として譲渡する。
という内容のかなり重い物だった。
「あの、これは・・・」
「おや、お気に召しませんでしたか?では私財の8割と権利を8つでどうでしょう?」
トーマスさんは俺がどもったのが条件が軽すぎると思ったようで、さらに上乗せを始めた。
それを慌てて止める。
「軽かったのではなく重すぎるように感じたのですが・・・」
「ああ、そういうことですか。それはですね、」
手をポンと叩いてトーマスさんは説明しだす。
いくら非戦闘職だったとしても女神が補助して召喚された人物がただの商人なわけがなく、もし役目を持っていたとしたら、失ったときに取り返しがつかない。魔王討伐の陰の立役者になる竜騎士がいないため慎重に行動したい、というのが国の方針だそうだ。
それにもともと、召喚者のステータスやスキルは機密事項なので、ばらした場合王族ですらただでは済まないのだそうだ。それを王城御用達の商会の会長だとしても名誉貴族程度のトーマスさんに科せられる罰としては、かなり軽いのだそうだ。
「まあそれに言いふらさなければ問題はありませからね」
そう言いながらトーマスさんは笑った。
俺は何度か読み間違いがないか確認をしてからサインをした。
「はい、では契約成立ですね
ではさっそく」
そう言いながら手を差し出すトーマスさん。
そんなに興味があるのか、ステータスプレートを差し出すとプレートを穴が開くほど凝視しだした。
「商人にしては・・・幸運が低いですね、ですがそれ以上に他の戦闘系にかかわるステータスが非常に高い。 商人として必須の暗算はともかく目利きも観察眼も、さらに交渉術もあるとは・・・これはこれは・・・」
そう言いながらしきりに頷いたトーマスさんはそのままアドルフさんにステータスプレートを渡して口を開く。
「レンカ様のステータスプレート、拝見いたしました。正直な話をすると商人には向いていないでしょう。といってもスキル、特技に関しては熟練者とそう変わらない物をお持ちです。
向いていないと感じた理由はステータスの高さです。商人というロールは非戦闘職の中でも特に幸運が高く次いで知力が高いです、そしてそれ以外の筋力、体力、魔力,魔耐、耐性、俊敏は最低レベル、G以下いうことが多いのです。
レンカ様は異世界人ということで知力が大変高いですが、それと幸運以外もここまで高いと安全な都内で完結することの多い商人ですと、宝の持ち腐れになってしまいます。
そこで、うち、リーヴェン商会の専属の闘商になっていただければと思います。
闘商というのは闘う商人と書いて闘商です。
闘商というのは、外壁の外に出てモンスターを自力で狩ってそれを商会に直接下す方々の総称で、実際にそういうロールがあるわけではありません。ですが全くいないというわけではなく、そういう方々が集まってどこにも所属しないフリーランス集団を”キャラバン”といいます。
このキャラバンの場合モンスターを狩り、違う場所に移動してから売るため、元手がほぼ0で収入が大きい代わりに入街税が高かったりといろいろメリットデメリットもあるのですが、今は置いておきましょう。レンカ様は召喚者でこの国に帰属しなくてはいけないわけですから、フリーランスに大陸中を自由に移動、ということはこの国としても許可できないでしょう。最悪拘束,監禁ということになりかねません。
なのでこの国所属の私達リーヴェン商会の専属闘商となって頂ければと思います。
どうでしょうか」
そう長々と話したトーマスさんは一息ついてお茶を口に運ぶ
「選択肢はその闘商だけでしょうか?」
そう質問を変える俺にトーマスさんは答える。
「いえ、商人には、街の中で商いをする、街商や街の中に店を持つ店商、特産品を持ち運び、違う土地でその特産品を売る行商、材料を種類ごとに分け、必要に応じて個人から商会まで幅広い相手に下す仲買商などいろいろありますが、このステータスを活かすとなると行商、闘商、キャラバンなどしかありません。少し違法な方向に行くとしたら奴隷狩りなどでしょう。
違法な奴隷狩りは言わずともお勧めしない理由はわかると思いますが、行商については国内、または近隣の親しい国の間しか行き来出来ないレンカ様には向いていないでしょう。
個人で運べる量など知れていますし、そんな微量を運んだとしてもともとそこに根付いている商会などがその商品も扱っており、質は変わらずとも、最適なルートを通って大量に運んでくる商会の商品よりコストがかさみ値段が高くなり、さらに見ず知らずの行商の商品は好き好んで買う人は少ないでしょう。
それにもともと行商というのは、辺境の小さな村や町が必要な物資を手に入れるために安い個人に頼んで運んできてもらっていたのが始まりなので、故郷と呼べる場所が王都のレンカ様にはあまり向いていません。」
トーマスさんの説明を聞いて少し悩む。
元々商人というロールを選択して姫様に見せたときに地球で言うタイプの行商になって世界を見て回ろうと思っていたのが、地球での行商はどっちかというと事らの世界でのキャラバンに近いようだ。
でも無所属のキャラバンはこの国的には認められない。闘商とやらは国所属の商会に縛られる形になるけど街商とは比べ物にならないレベルで移動が可能になるだろうし
「せっかく異世界に召喚されたのですから行商として世界中を見て回りたいと思っていたのですが、むずかしいようですね。
闘商というのはどんなことをするのですか?
闘商になるメリットとデメリットを詳しく教えてもらいたいのですが。」
そう口にした俺を面白そうに眺めていたトーマスさんは説明をし始める。
「わかりました。
闘商というのはですね商会専属の冒険者のようなものです。
ふつう商会専属の冒険者といったら用心棒のことを指すのですが、闘商というのは商会と冒険者組合の両方に登録をするのです。
闘商になる場合冒険者組合にステータスを開示して一定以上のステータスがないとなれないのですが、その後はほぼ冒険者組合には関わりません。
闘商が倒したモンスターは商会が直接購入する形になる場合が多いのです。ただ冒険者組合におろさないといけない場合もあるのですが、その前にメリットについて話しましょう。
闘商の方が商会にモンスターなどの素材を下す時は冒険者組合に下す場合より最大3割ほど値段が高くなります。これは普通冒険者組合に下されたものは数日たってから捌かれるのですが、大量にまとめてやるため雑になり鮮度や品質が落ち、その後仕入れ値に数割ほど上乗せした値段で商会などに下すのです。
ですが闘商は倒したその日のうちに商会に下すため鮮度がよく、商会で捌く場合少しでも高価になるよう慎重にさばきます。そのため闘商の方々が下す素材は冒険者組合から下ろされる物より質がよいのに、ほとんど変わらない値段で商会は買うことが出来ます。
我々はほとんど同じ値段でいいものを、闘商の方々は同じものを高い値段で買い取ってもらえるというのがメリットになります。
デメリットとしては日をまたいで冒険者組合に存在する依頼の品を商会に下してしまうと罪に問われる場合があることです。
これには理由があり、だいぶ昔の話なのですが、ある薬草を欲しいと冒険者組合に依頼を出していた方がいらっしゃったのですが、その薬草はなかなかに珍しい物であったため冒険者組合に下さず、高く買い取ってくれる商会のほうに普通の冒険者の方も下ろしていたのです。
そしてその薬草は商会で異様に高い値段で売りに出されていたのです。その依頼が出ていることを知っていた商会が、その依頼者に相場以上に高く売ろうとしていたのです。
ですがその依頼者は病魔の研究者で資金に余裕がなかった。その研究者がなけなしのお金をはたいて出していた依頼だったので、その報酬の2倍以上の値段に手が出せず、その研究者はその薬草を手に入れられなかったのです。
その状態がしばらく続いたある日、国中に疫病が蔓延したのです。その被害は大きく、研究者の方も亡くなってしまったのですが、後日国が研究者の研究資料を調べたところ、その疫病の対抗薬にある薬草が必須であったことが分かったのです。
ある商会が異様な高値で売っていた薬草です。
もしその商会が適正な値段で売っていれば、その前に冒険者が研究者の方に薬草を下ろしていれば、疫病による被害をほぼ0に近い状態に出来たのです。
結局その商会は罪を問われ取り潰し、重役たちは処刑。冒険者の方々は多大な罰金を払うことになりました。
それから、外壁の外で入手したものは基本冒険者組合に下さなければならない。例外として闘商の方々が商会に直接下せますが、日をまたいで存在している依頼があった場合は多少損をすることになってもそちらに回さないといけない、ということになったのです。」
・・・え?後半の昔話必要だった??
いや、確かに重要な話かもしれないけど気が滅入るだけなんだけど、普通に説明だけしてくれればよかったじゃん。
でも少し引っかかったことがある。なぜ闘商とやらが商会にそのまま下すことを許可されてるんだ?
ここで闘商とやらが間でうろうろしてたらその疫病の話と同じにならなくても近いことになるんじゃないか?
冒険者組合に下される量が減るだけなのだから・・・いや、そこまで影響しないほど闘商とやらの人数が少ないのか?それならなおさら闘商なんて存在しないロールを作る必要がない。
冒険者組合にも商会にもメリットがないと・・・
そこでふと顔を上げるとトーマスがんがにやける口を隠すようにお茶を飲んでいた。
一瞬カチンときたが、これも何らかの理由があるのだろう。この国有数の商会の会長が無意味な行動をわざわざするとは思えない。
少し深く呼吸をして心を落ち着ける。
探られてるならこちらも探ろうか?
「なるほど、大体わかりました。ですが一つ引っかかります。なぜその疫病での事件のようなことになる可能性があるのに闘商というものの存在を許すのですか?
考えられる理由は3つ
1つ目は冒険者組合にしか依頼を出せない人がいるように商会にしか依頼を出せない人がいる
2つ目は俺のようにロールが商人で商人スキルを持ち、ステータスが高い人らは冒険者組合としても商会としても欲しいため共有に近い状態にする。
3つ目は単純に商会に直接下せる人材がほしかったため、商会が国や冒険者組合に圧力をかけた。
この3つのうち1つか複数かすべてかわかりませんが。
どれでもないとしたら・・・俺にわざと違法行為をさせて、国所属の人間だと言って国の信頼を落とすためか、自分の商会の不正を働いている人物を俺に絡ませてまとめて摘発するため、ってところですかね?」
そこまで言い終わったタイミングでトーマスさんは驚いたような表情になる。
そして、
「あっはっはっは、良いですね。あなたの予想はほぼ当たっています。ですが後半のわざと違法行為をさせるというくだりは間違っています。あなたは気付いていないかもしれませんがこの部屋にある魔法灯、実は録音の機能もついている優れモノなのですよ。
万が一私があなたを使って国を陥れようとしていたとしても、この魔法灯に録音されている音声を流せば私たちがあなたをそそのかしたとまるわかりになってしまいます。
それと私の商会の人間が全く不正を行っていないと断言はできませんが、もしそういう人物がいたとしたら私かアドルフが見つけてじかに手を下します。」
トーマスさんは俺の発言を聞いた後ひとしきり笑った後、真剣な目になって続ける。
「ああ、闘商というのがなぜいるか、でしたね。
先ほど話していた通り、元々は冒険者組合を通さずに商会にモンスターの素材などを下すのは普通のことだったのです。何せ商会のほうが高値で買ってくれますからね。
冒険者組合もまあわかりやすく言えばモンスター相手の傭兵を管理するだけの組織に近かったのですよ。ですが冒険者組合で登録を行って、モンスターを狩って、そのモンスターの素材を買ってくれる商会を探しに練り歩くのが非常に重労働だったために、依頼として冒険者組合を通すようになったのです。
それでも当初は規則などなかったので、高く買い取ってくれるところを知っていたらそちらに下したりするのは普通のことでした。
冒険者組合としてもモンスターを捌く人材を雇うのは手間ですし、素材の管理も楽じゃない。多少であっても商会のほうに流れてくれるなら手間が減って喜ばしいことなのです。ですが商会のほうに下すのは違法になってしまった。それは双方に不利益が起こることなので国に直談判をしたのです。
その結果出た結論が闘商というわけです。
そして以前からステータスの非常に高い商人のロールを持っている人は話題になっていたので、闘商という枠とルールを設けました。まず商会と冒険者組合、両方に登録していること、そして冒険者組合に日をまたいで存在している依頼が出ていた場合そちらを優先するようにと。
ですがそれだけだと両方に登録する人たちが続出するため、商会に登録できるのは商人だけ、冒険者組合に登録するには一定以上のステータスが必要、ということになったのです。
まあ後者はともかく前者の商会に登録できるのは商人のロールだけというのは闘商だけに当てはまるルールですが。このルールがある場合露店などを出している商人以外のロールの方々を締め出さないと行けなくなりますから」
トーマスさんの話を聞いて再度考える。この闘商というのになるかどうか、おそらく闘商というのになったとしても行動範囲が広がるわけじゃない。行動できる範囲はこの国とその近隣の国のみ、それなら闘商というのになって商会からの情報も冒険者組合のほうの情報も両方貰ったほうがいいだろう。
「わかりました。その闘商というものになりましょう。」
「そうですか! いやぁよかった。うち所属の闘商のうち数人が年を取ったためやめてしまったのですよ。ほんとによかった」
そういうトーマスさんは胸をなでおろしながら非常にうれしそうだ。
「レンカ様が予想以上に優秀そうで楽しくなっていたのですが、うちの商会の傘下に入るとなるとさらに楽しくなりそうです。無理いって予定を開けてほんとによかった」
そう言いながらトーマスさんは手を差し出して握手を求めてきた。紅茶を飲みながらにやけていたのはそれでか、と内心苦笑いしながら握手をする。
「まだ少し時間はありますが今日はこれで失礼させていただきます。そうですね、次は王城から出ていいと許可が出るだろう3週間後ですかね、王城を出たら私の商会にいらしてください。もてなさせて頂きます。場所は後日地図をお送りするのでそれを頼りに来てください。ではレンカ様また。」
そう言いながらスキップしそうなほどウキウキで出ていくトーマスさんの後をアドルフさんがお辞儀をしてからついていった。
アドルフさんしゃべったっけ??
ーーその日の夜ーー
書庫に入る許可が下りたようだ。
2日目の食堂で話をした執事のような男性にトーマスさんの口添えがあったのだと言われた。
そうか、それなら次あった時にお礼言わないといけないな。そう思いながら少しウキウキしている俺はそのまま告げられた言葉に冷や汗を大量にかくことになる。
「それといくら個室だとしても発言には起きお付けください。では」
ん??
・・・あ