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学園都市・アマデウス

ここ、学園都市・アマデウスの基盤となっている人工浮島(メガフロート)は縦三キロ、横一キロの東京湾の上に浮かんでおり、レインボーブリッジに繋がるように立地している島だ。

そして、学園都市には幾つかの学区が存在している。


まず、当方のメイン。私立四ツ葉学園を中心とした第一区。

異能研究・最先端技術研究所が集まる第二区。

商業・工業施設が集まる第三区。

一般人らが居住する、第四区。こんなところだ。


科学組織と異能者組織の総本山であり、半独立性の教育機関でもある。

人口のおよそ半数を科学者が、もう半数を異能者が埋め尽くしているが、未だ異能者の存在が露見した事はない。


ここの歴史は古く、発端は明治初期までに溯る。

創作の第一人者、明治時代の《鷹宮》の会長──鷹宮毅(たかみやつよし)が起こしたプロジェクトが始まりだった。


彼は終戦後にGHQに話を持ちかけ、『民主的且つ最先端の地』の開発の為に協力を依頼した。その為、《鷹宮》は今でも米国政府と協力関係にある。

民主的とあらばGHQも承諾せざるを得なく、着々とその為の準備は進められていった。

そして、終戦から十年後の一九五五年。何処よりも早い復興と開拓を遂げたのだ。


冷戦期には米国とソ連が秘密裏に戦争用の異能者の開発を進めている中、世界で唯一の『異能者組織の為の学園都市』の完璧な実用化に成功した。

そこからの発展度は、言わずもがなである。


────閑話休題。それはどうでもいい話だ。ここの地理学である。

本来の目的は、ショッピングしつつ鈴莉とイチャラブする事。天音が何と言おうが、異論は認めん。


ということで、現在進行形で恋人繋ぎしつつ大通りを歩いています。

……まぁ、この光景で天音が口出ししないハズもなく。


「お兄ちゃん。いい加減、お姉ちゃんと手を繋いで歩くのは止めていただきたいのですが。周りの視線がハンパないですよ」


「恐らくだが、鈴莉の可愛さに見惚れてるんだろ。後は俺への嫉妬の視線だ。気にするな」


「……天音は? 天音は可愛くないっていうんですか!?」


「誰もそんな事言ってねぇだろうが。被害意識高い系女子か」


大通りを通る周りの恨めしげな視線を身に受けつつも、俺たちは気にせず目的地である、赤い看板に英語のロゴが入っている某大手チェーン店の服屋へと向かっていく。休日なのか、人も多い印象が見られた。


入口付近まで来たところで、一度足を止める。


「……もっと運動しないとダメだな、こりゃ」


呟き、膝に手をやれば、貫くような僅かな痛みが俺を襲う。

昨日の件のせいか、はたまた俺がニートなのか。とにかく膝が痛い。

ふと隣を見れば、どうやらそれはこの二人も同じようで、


「痛ぃ……もう無理」「…………ふぅー」


あー、なんだ。えっとねぇ──見れば分かる。


「二人してニートか。だらしがn──」


「「あっくん(お兄ちゃん)にだけは言われたくない(です)!」」


「息ピッタリかよ、お前ら」


毎度毎度、コイツらのハモリには目を見張るモノがあるわ。魂のソウルメイトじゃねーの? ホントは。


「ま、行くぞ。止まったら少しばかり冷えてきたしな」


「ですね。行きましょっか」




さて、中に入るやいやな暖房が俺たちを迎えたワケだが。

──二人の暴れっぷりは如何なモノかと。


「お姉ちゃん、これ良きですよね!?」


「そだねっ! あっくん、これもっ!」


運良く半額セールなのをいい事に、人目を気にせず買うわ買うわ。おかげでカゴの中は清楚系とロリ系のお洋服ばっかりですよ。……俺の服は?


はぁー……と大きな溜め息を吐きつつ、二人から少しだけ離れた場所で傍観するように見守る。女は女に相手させとけばいい。無闇に男が手出しする必要もないしな。


「……ん?」


羽織っているコートの内側から、着信を知らせる唐突のバイブレーション。

誰だと思い画面を見れば、我がはとこ、鷹宮結衣さんからであった。


「……もしもし」


『鷹宮天音ちゃんについての報告。今一人?』


「鈴莉たちと買い物中だ。今は少し離れてる」


ならいいわ、と言った結衣さんは、一拍置いた後、簡潔に告げた。


『──あの子、マズイわよ。このままじゃ』


「……マズイ?」


『えぇ。本来なら政府に報告されているハズの忌み子なのに、政府にも《鷹宮》にも情報が入ってない。そして調べた限り、国内のどの異能者組織にも所属してない』


そして、と付け加え、


『彼女の人物相関を洗ってて分かった事なんだけど……。彼女、()()()の人間らしいのよね』


「……は?」


一瞬、結衣さんの言っている意味が判らなかった。

それもそのハズ。何故なら、《鷹宮》の本家筋は──


「おじいちゃん、父さん、俺、結衣さん……だけのハズだろ?」


『アタシもそう思ってた。でも、違ったのよね。あの子の母親が残した遺書にしっかりと書いてあったわ』


「だとすれば、アイツは──」


そこまで呟き、無理矢理にでも思考を止める。

……認めたくない。仮にあったとして、如何してだ?

真っ白になっていく脳内に、受話器から発せられる声だけが通過していく。


『秘匿も何もされてない無防備な存在。……しかもそれが忌み子なら、悪用しない人間はいないわよ。こっちも早々に手を回すけれど、暫くは全方位に気を配った方がいいわ』


「…………現段階で、そう思しき存在は?」


『いないわ。()()()はね』


「そうか。ご苦労さま」


『いんや。とにかく、背後に気を付けな。アンタも巻き添え喰らうわよ。それじゃあね』


そう言って通話を終えた俺は、鈴莉と服選びをしている天音と、その周囲を執拗に監視していたのだった。

一環の不安と、迫り来るであろう恐怖に──向き合いながら。



~to be continued.


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