元無気力少年の名状
1月ーー重版出来。これ『しゅったい』って読むんだよ。『でき』じゃないんだよ。間違えるなよ、世のオタクども。
2月ーー新作が出来上がる。これから出版まで約1月かかる。誤字のチェックとかもしなければならない。細かい作業は好きだから苦にはならんが。
3月ーー新作出版。これはあまり受けは良くなかった。
そして4月ーー
「やあ久しぶりですね、早見先輩」
アニメで言うと眉毛をピクピクさせて顔を引きつらせる感じだろうか。
今日入社した新人社員の一人が、春野ののだった。なんで最終話の直前に出てくんだよ。多分この話書くためだろうけど。
「まあそんな感じですね。思いのほか編集者編はネタ 切れが早かったそうですよ。最近は即興で速攻で作ることの方が多かったみたいですし」
「それ万が一落としたらどうなるんだろうな」
「別に今は毎日投稿とか言ってませんからね。問題ないんじゃないですか?」
「つーかお前が出てどうなるってんだろうな。もう尺の半分埋まってるぞ」
「会話ラリーは僕が一番書きやすかったそうです」
「後輩キャラが書きやすいとか?なら次回作はバッチリだな」
「多分僕のキャラじゃないですかね。口調とか、そういうの」
「とりあえず仕事するか。そろそろ上司に怒られそうだ」
「ですね」
「じゃあ、下巻のプロットはこれで完成ですね。下巻発売から人気が出る可能性もありますから、頑張りましょう」
この子は、ストーリーを作るのは遅いが、かなりいいものを作って来るからな。上巻のプロットができたときに下巻のプロットを用意していなかったから不安たったが、自由にやらせて正解だったかもしれない。
作家の姿を見送ってから席を立とうとすると、影からののが現れた。
「なんか、先輩が働いているのをは、違和感がありますよね」
「月夜にも言われたぞそれ」
なんだ、僕が働いているのがそんなにおかしいか。
「さっき作者に聞いたんですけど、僕を出した意味って、文芸部員の将来を描くのが編集者編なのに僕がかけてたら嫌だからだそうです」
「そ、そうか」
「有り難いですよね、僕の途中参加なのに」
「作者からしたら全員同じなんだよ。全員、自分が作った大切な子供だ。あの子もそう言ってたよ。自分の作品には命をかけるし、キャラには魂を込めるって」
「それが、作家ってもんなんですかね。僕には到底理解できません」
「ならなんでここに入社したんだよ……全員が全員そうってわけじゃないんだろうけどな。少なくとも、好きで書いてるやつはそうだろうけど」
「それでも、理解できない人には理解できないと思いますよ。僕みたいな人間には、特に」
「ああ、僕にも理解できない。あくまで僕は、作家じゃなくて編集者だからな」
「面倒ですね」
「何が?」
「価値観の違いが」
「そうか」
「どうしました?」
「いや、尺。作者の時間がそろそろ限界だ」
「学生って面倒ですね。やる事多くて」
「さらに受験生だからな。書いてる時間あんのかね」
「それでも書きたいから書いてるんでしょ。きっと」
理解できないものは理解出来ない。でも、好きなものには真っ向から向き合う姿勢は、何故か僕にも覚えがある。
あの時の僕も、同じだったから。
残り2話!!頑張ります!!




