元無気力少年の形状
「早見、この前のやつ重版決まったぞ」
「え、マジすか」
「喜べよ。自分の担当だろ」
「いやあれは経験させたかっただけで売上は狙ってませんでしたから」
「じゃあ本気で作ればもっといいのが作れるのか?」
「作家次第としか言いようがないですけどね」
「まあ、そうだよな」
はあ、と大きなため息をつく。
まさか、あれで重版するとは。まさか、僕がこれ関連で予想を外すとは。データは結果ではないようだ。
「重版が決定してため息とは、いい度胸ね」
食堂端っこにいた僕の向かいの席に月夜は腰を下ろす。
「上にも書いてるけど、重版狙ったやつじゃなかったからな。むしろ大コケしてくれた方が作家も成長できるだろ」
まあ、長くシリーズを続けられるなら、もちろんそっちの方がいいんだが。続けるとなるといやでも書き続けなきゃいけないからな。
「戦略負けってところね。もっと内容を下げるなりなんなりすればよかったのに」
「それじゃ作家の評判が落ちる」
「全くの無名の新人作家に評判とかあるの?」
「あるだろ。0という数字が」
「それないって言ってるのも同じじゃない」
「じゃあ0.1」
「思考が幼児化してるわよ」
「それは困るな。これから打ち合わせなんだ」
「ならちゃんとしなさいな。シャツのボタン止めるとか」
「苦しいんだよな。一番上まで止めると」
「関係ないでしょ、そんなの」
「いや生き苦しいのは問題だぞ」
「字が違うわ」
「わざとだよ」
「あらそう。ついに頭が腐ったのかと思ったわ」
「それは間違ってないんだけどな」
「貴方の場合は腐ってると言うよりイカれてるっていう方が正しいんじゃないの?」
月夜は席を立ち、去って言った。ちなみに二人とも箸は全く進んでない。月夜は僕を冷やかしに来ただけだ。
あいつはあいつでいろんな人から結構頼られてるみたいだからな。今日もランチは先輩と食べるそうだ。
ちょっとだけそれが羨ましかったりする僕であった。
無常終了まで後3日。




