元無気力少年の日常Ⅷ
1年ぶりの地元は相変わらずだった。
雪は積もっているし、人もまばらで、街にいるのはほとんどデートをしている男女くらいだった。
見覚えのあるこの教室は。本棚は。ここが文芸部の部室である事を物語っていた。
「やあ、早見じゃないか!久しぶりだな!」
後ろを振り返ると、左手の薬指に指輪をはめた再来先生がそこにいた。
「ご結婚おめでとうございます」
「結婚だけじゃないんだなぁこれが!なんと半年後に生まれるのだ!」
「へぇ、朗報ですね。あいつらも喜ぶと思いますよ」
「にしても変わったよな、君も」
「よく言われます」
「水上がいなくなったときは絶望に満ちたような顔をしてたからな。あの頃と比べると見違えるほどにいい顔つきになった。希望を知っている目だ」
「まあ、今の生活は気に入ってますからね」
「そうか、それは良かった」
「そういえば文芸部の部員は今何人いるんですか?
「大体15人ほどだな。君達が卒業した後、春野や君の妹が頑張ってくれたからな」
「ええ、聞いています」
しばらく、再来先生と話し込んでいた。
今日は24日。クリスマスイブである。毎年25日には、ここに集まろうと決めたのだ。みんなで。そのみんなに、瑞乃は含まれていないが。
恩師の近況に相槌を打ちながら、瑞乃の今を考えてしまう。月夜もああ言っていたし、心配はいらないのだろう。きっとどこかで、上手いことやっているのだろう。だから、僕が気にする必要は、全く無い。
冬の空は、早くも暗くなろうとしていた。
「じゃあ、今日はこの辺で帰ります。ここには明日も来るわけですから」
「ああ、楽しみにしているよ」
空を見上げながら歩いていた。気がつくと僕は水上の表札がかかった家の前で足を止めていた。
「早見君かい?久しぶりだね」
全く、今日はついていない。会いたくない人に会ってしまった。
何故ならそこにいるのが、水上瑞乃の姉、水上瑞葉だからである。
数日前にやらかした投稿ミス。それをこういう形で取り戻させていただきました。
あれのお陰で少し余裕が生まれたのは内緒だよ




