今するべき事。
「こちら、羽衣。ターゲット確認」
次の日羽衣の力を借り、佐原に近づく事にした。
「了解。計画通りにお願いするわ」
隣で月夜が答える。
「えっと、計画ってなんだっけ?」
僕と月夜の間に冷たい空気が流れた。正確には、月夜の周りに冷気が漏れ出していた。
「…取り敢えず世間話でもして来なさい」
羽衣に難しい言葉は通じないと判断したのか、月夜は計画を変更した。
ちなみに計画では佐原の誘導尋問をするはずだった。こんなの羽衣にできるわけないよね。あらかじめセリフは決め、さらにパターンまで考えていたんだけどね。
数分後、部室に羽衣が戻ってきた。
「なんかね、瑞乃ちゃんの事ばっかり話してたよ!」
「どんな内容なのかしら」
「えっとね、あれは日本の小説界大きく変える存在だとか、天才だとか、そんなの」
なんだ、いいやつじゃないか。部員に欲しいぐらいだ。
さて、ここからどうするか。文化祭の中止を中止にするためにはどうすればいいのか。
「こんにちはー」
表情の硬い水上をみて、僕と月夜は目を合わせる。
「今朝、学校にも届いたらしいな」
僕が話したのは勿論例の脅迫状の事だ。朝、学校にも届いた。僕と月夜の、作戦が。
簡単な事だ。犯人が分からないなら、犯人をでっちあげればいい。少なくともそれで水上の緊張はほぐれるだろう。
「で、月夜。そろそろ説明してもらおうか、なぜこんなことをしたのか」
「あら、ばれてしまったようね。いかにも、私がその脅迫状を書いた犯人よ!」
「取り敢えず、今の録音しといたから。早く学校に伝えるんだな、冗談だと」
そういうと、月夜は学校宛の謝罪文を書き始めた。
勿論、これは演技である。月夜は犯人ではない。これは掛けだ。真犯人が、学校のどんな弱味を握っているのか。それは分からない。だが、あくまで僕の目的は文化祭の開催。そして水上の書いた小説を読むこと。なら、これで十分なんだ。ミッションコンプリートだ。
「これを適当に職員室に仕込んで貰えるかしら」
「あ、うん」
水上に紙を渡し、水上を部室から追い出す。
「それで?これからどうするのかしら?私を犯人扱いした事、恨むわよ」
「取り敢えず月夜は学校側に不祥事とかないか調べてもらえるか?」
「特に無いわよ。そんなのとっくに調べてるに決まってるじゃない」
流石に優秀である。多分大半付き人の黒服さんにやってもらったんだろうけど。
「やっぱり、水上がなんらかの事情を知ってるとみて間違いないだろうな」
学校の件と水上は関係は無かったというのなら、何故なのか。
「犯人はもう、検討ついているんでしょう?」
僕は小さくうなずいた。
今日のあいつの言動をみて、僕は決断を下した。
一度疑ったのなら、とことんまで疑う。そう決めた。
足りないものは一つ、理由。
「それを知るために今僕がすべき事は──
なんか段々ラブコメじゃ無くなってきてるような気がする……