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元無気力少年の日常Ⅱ

「じゃあ早見君、これ読んどいてね」

 そこに積まれたのは、今度の新人賞の応募作品達。

月夜が言っていたが、僕は『期待』の新人編集と言われている。その理由の一つが、読むスピードの速さだ。実際、この程度の量なら1週間もあれば読み終わる。因みに普通は1月はかかるらしい。

 まあ今は担当している作家もいるのでそこまで早くできるか分からないが、(まあまだ大筋が決まってプロットを直している段階だからしばらく連絡ないと思うが)どんなに遅くとも、2週間もあれば読み終わるだろう。にしても今までは選ばれた作品を読んでいたから、選ばれなかった作品を読めるというのは感慨深いな。これでも一部のはずなんだけどな。

 ただ残念なのが、僕の意見がほとんど反映されないという事だ。当たり前だが、僕は新人。つまり下っ端なのだ。他の新人はまだ仕事を覚えるだけでいっぱいいっぱいで、こんなのやってる余裕はないらしく、これをしている僕は結構な異分子だとは聞いているが、やはり新人の意見なんて参考にするまでもないのだろうな。

 因みに僕が関われるのは二次選考までである。三次、最終選考はもっと上がやる。少なくとも僕は関われない。

 ただまあ自分が選んだものが半年後に発売されるかもしれないと思うと、やる気も湧いてくる。


 ふと思いたち、先輩に聞きにいく。

「先輩、気に入った作家がいれば僕がもらっていいんですよね」

「ああ、落ちたやつならもらってっていいけど、二次選考落ちの作家はあんまり期待出来ないぞ?文章力もストーリーも、発展途上だから少なくとも即戦力にはならない」

「それを成長させるのが、僕たちの仕事じゃないですか。それに……」

「それに?」

「どんな作家でも、初めはど素人から始まるんですよ」


「はい、編集部の早見です。惜しくも二次選考で落選となってしまいましたが、僕と出版を目指しませんか?」

「え?いいん、ですか?」

おっしゃぁぁぁ!!と、涙ぐんだ声が聞こえてくる。

 やれやれ、まだ出版するわけではないのに。

 さらに言うなら、僕はあくまで、『原石』を見つけただけで、まだまだ磨く必要があるだろう。

 少なくとも、この話では話にならない。話にならないし、話に出来ない。

「つきましては、今月中に一度編集社の方へお願いします。なるべく予定はそちらに合わせますので」

「はい!はい!何処へでも行きます!」

 予定を確認し、確認させ、来週に会う事を決めた。

 これから面白くなりそうだな。

 もう夏も終わりだと言うのに、燃え上がりそうだ。

ここまでわくわくするのはいつぶりだろうか。

 この子は、僕が見た中で二番目の才能を持っていると、そう感じさせるような子なのだ。

 先輩編集は期待出来ないと言っていたが、鎌池さんだって三次選考落ちを三木さんに拾われてあそこまで鍛え抜かれたのだ。

 なら、この子は僕が、育てる。

 例え今は期待出来なくても、期待して待てばいいのだ。

首を長く。

 当面の目標はこの子の育成だなと、心に書き記した。

名付けるなら何だろうか、編集者編だろうか。ダサいか。

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