シスコン兄貴の日常。
妹、瑠美とのいざこざから1日経ち、月曜日。
朝、部屋のカーテンを開けると、家の前に月夜がいた。制服姿でなにをラブコメ醸し出してくれてるんですかね?消えろ。
カーテンを閉め、朝食を摂り、家を出る。
月夜が居る。気にしない。歩く。月夜がついてくる。隣に来た。気にしない。歩く。歩く。歩く。学校につく。周りから嫉妬の目で見られた。月夜は顔を赤らめていた。
月夜は自分に注目が集まるのが苦手なのだ。視線が自分に集まると、すぐに下を向き、顔を赤らめる。目がうるうるしている。ぶっちゃけ可愛い。
自分の教室に入る。月夜がついてくる。
「お前、教室違うだろうが」
水上が1組、僕と羽衣が2組。そして月夜は7組で、文芸部の中で、一人だけ離れているのだ。さらにいうなら月夜は国際教養科で、総合進学、いわゆる普通科の僕とはコースが違う。
つまり、月夜は僕とは違うクラスだ。しかしついて来た。昨日、僕と会った時は至って正常だった。つまり、あの後、何かあったのだ。
「正解。と言うわけで、慰めて」
心を読むな。『俺を好きなのはお前だけかよ』の『パンジー』か。
僕は少し考えて言った。いや、考えるまでもなかったんだけど、なんとなく間をおいた。
「華月さんか」
「YES.」
やれやれ、あの人は僕も苦手なんだけどな。
如月華月、19歳。如月月夜の兄。姉じゃない兄だ。僕は人が苦手…いや嫌いだ。この人ね、シスコン拗らせてんの。僕は今までに何度か華月さんと衝突している。
「兄さんに対して、もっと酷評すべきでは無いかしら?」
どんだけ華月さん嫌いなんだよ。いや、苦手なだけか。誰しも無条件で半永久的に引っ付かれるのは鬱陶しいよな。
「で、何があった?」
昼休み。午前の授業を終えて、部室に来ている。現在この部屋は僕と月夜の二人きりだ。ラブコメ展開多いなぁ、今回。いやこれ一応ラブコメだから少ないぐらいなんだけども。というか羽衣が入部するまでは良くあった事だけども。
「……兄さんが私の本を持ち出したのよ。別にそれはいいのだけれど、返って来た本にうっすらと傷ついていたのよ」
……言い忘れてました。読者の皆さん。月夜さんは潔癖症です。本に対してだけね。ただし本に対してだけはガチで。でも図書室とかは普通に利用してるよ。ちなみにこれ、解決方法無いからね。月夜の怒りを収める方法とか、ないよ?
と、言うわけで僕は匙を投げた。
「早見くん、俺はどうすれば良いのだろうか」
「取り敢えず死んで下さい。財布の中の金は貰ってあげますから。」
放課後、サイゼリヤに来いと、僕は華月さんに呼び出されていた。
「くっ……やはりもうそれしか無いのか!」
そうです。それしかありません。早く死ね。
「まさか俺が月夜ちゃんを傷つける日が来るとは……
」
いや月夜が傷つく理由の大半あんただけど。
「依頼料は5000円程で」
「低いなぁ。金持ちならもっと出せよ」
自分でも分かるくらいに、性格悪いなぁ、僕。
ちなみに依頼料は『涼宮ハルヒ』シリーズ全巻で落ち着きました。
「それで、月夜さんどうしたの?」
家に着いた後、帰宅が遅れた理由を瑠美に説明していた。
「お前ん時と同じだよ。新しく本屋買って、メッセージカード添えた。月夜は気持ち悪いって言ってたけど、嬉しそうだったな」
きっと、それが兄妹の愛情というものなのだろう。
ちなみに、傷がついた本は華月さんが月夜から原価で買い取った。月夜のやつ、本一冊分得しやがって。羨ましい。僕は11巻分得したけど。