愚かにも、僕は。6
記憶の底から、何かが込み上げて来る。
女誑し、女誑し
と。
言われているのは小学5年生の時の僕だった。
バケツの水をかけられたり、机に落書きされたり、そんな程度のものだった。だが、今まで仲良くしていた『友だち』から受けたそれは、幼心に、消えない傷をつけた。それが『イジメ』どと認識するまでには、もう少しかかったけど。
イジメられていた理由は恐らくただの嫉妬だったのだろう。羽衣やカンナは、僕の学年ではかなり人気だったから。その二人と仲良くしていることが、男どもの癪に触ったのだろう。
それがイジメだと認識した後も、僕は何もすることができずにいた。
しかし、ある日見てしまった。羽衣や、カンナが、イジメられているところを。
僕は、その輪の中に入り、一人ずつ痛ぶった。
もともと才能があったのだろう。当時小柄だった僕が、リトルでキャッチャーをやっていた子に喧嘩で勝った。先生に止められるまで、僕は嬲り続けた。血が 飛び交ったあの場所の、鉄錆の匂いは今でも記憶に残り続けている。
今僕が表に出している人格は、この時に芽を出した。
本心を隠し、自分の好きな事だけに没頭し、人間関係は最小限に。
そんな性格が出来た理由は、以外や以外、他人だったわけだ。
程なくして、イジメはなくなった。
きっかけは僕が起こした先ほどの事件だった。
だがその結果、カンナは去った。
大会社の一人娘のカンナはとても可愛がられていて、イジメが表沙汰になってからすぐにこの地域を離れた。
その時に、カンナは、「ずっとずっと大好き」と耳打ちしっていった。
まるで走馬灯のように、駆け抜ける記憶は、僕が意識の下で今でも気にしている事なのだろう。随分と昔の事なのに今目の前で起きているかのように鮮明だった。
だがそのおかげで僕は目を開くことが出来た。
今更女誑しと言われたくらいで傷ついていて、この先やっていけるわけがない。
イジメの後もしばらくは女誑しと呼ばれ、そのたびにぶっ倒れたものだが、今は、あの時とは違う。
きっと今、あいつらは悩んで、傷ついているだろう。
なら、僕がここで寝てる訳には、いかなかった。




