兄妹とか言う邪魔な概念
先週一週間。激闘の末、なんとか羽衣にプロット通りのストーリーを書かせる事に成功した。ちなみにその間に月夜は自分の分を書き終えたぜ。よくやった。
そして肝心の水上は何故かあまり筆が進んでいない。
俺はというと、妹の所為で全然書いてない。いやね、ちょっと喧嘩しちゃったよ。
読書関連以外でお兄ちゃんが怒るのとか久しぶりなんだよ?
かれこれ一週間口聞いてないのよ。何が原因かって?決まってんだろ。あいつが僕の買い置きのチョコを食べたんだよ!
僕はチョコを買い置きしている。軽く空腹を満たす時や、頭が糖分を必要としている時に。つまりは、読書を楽しむために。
読書とは本当に楽しもうと思うと、食欲と集中力切れは大敵なのだ。
そのチョコを食べただと?許すか!いや、赦すか!
早見留美。早見読の妹。14歳。友達が多い。読書は基本的に兄から勝手に借りた本を読む為、兄と本の好みが似通う。本当は兄にもっと構って欲しいのだが、兄が無気力な為構って貰えず、拗ねる。
「と、まあこんな感じかしら?」
「全然違ぇよ。いや最後の方全く違ぇよ」
日曜日、僕と月夜は学校の部室に来ていた。妹の事について相談する為に。
何故こんな相談に向かなそうなやつなのかって?こいつ、妹属性ついてんだわ。何故かね。その属性、話にくれよ。
「あら、そんなに見つめられるくらいなら襲って欲しいのだけれど」
「いつもは基本僕が悪いから僕が謝って終わりなんだけれども、今回は俺のチョコ食べた留美が悪いんだからな。取り敢えず全額返金と絶縁したいのだが」
華麗に夜のお誘いを躱しながら、僕は言った。
「チョコ食べられただけで絶縁って……」
呆れたような顔で月夜が言った。まあ、呆れられてもしょうがないと思う。
「俺にとってチョコはお前よりは大事な物なんだ!」
叫ぶ。さらに呆れた表情で月夜は答える。
「そんな性格だから留美ちゃんはあなたのチョコを食べたのよ。あなた、兄妹である意味を分かってないわね」
「基本的に家族は邪魔な物だからな」
月夜がため息をつく。
「まあいいわ。私に任せなさいな」
やったぜ。
寄り道をし、帰宅し、自室に入る。勿論寄り道したところは本屋だ。『月とライカと吸血姫2』を買った。俺とこの作品の出会いは『このライトノベルがすごい!2018』。俺は『このラノ』をよく読む。作者インタビューとかは見逃せない。安里さんが女性だと知って驚いた。『86』、面白かったぜ。
部屋に入ると、留美が俺のベッドで寝転がっていて、大量のチョコが机の上にあった。この前留美が食べた取れのチョコと同じやつ。
「……お帰り」
「…ただいま」
ザ・沈黙!
留美は自分のスマホを俺に渡してきた。ラインの、月夜とのトークルームの画面。
「お前が悪い!(読宛)」
だそうです。
しばらくして、留美は俺の部屋から出て行った。
チョコの山の中に何かが入っていたので見てみると、「ごめんなさい」と、留美の文字で書かれていた。このように、兄妹と言うのはとても邪魔な関係だ。
***
読君と別れた後、私、如月月夜は留美ちゃんに連絡を取った。やっぱり一週間だんまりだったのはチョコを用意していたからだった。
留美ちゃんはちゃんと自分の非を認められる子だ。しかし、どうにも素直になれない。本当は読が大好きなのだ。兄妹としてね。
いわゆるツンデレ。それも、可愛い過ぎ注意のレベルの。チョコを食べたのだって、早見くんに構って欲しかっただけなのだ。
でも彼はそれが分からない。早見読には照れ隠しなどは通じない。人の心を理解してないからね、
早見くんにはストレート以外は通じない。私みたいにどんどん攻めないと。あのバカには通じない。