文芸部と百人一首。1
「ほ…
その文字が聞こえた瞬間、教室ではもう一つの音も響く。そして積み重なっていく。
「あまつ…
瞬間、やはりその音は響いた。どんどんと積み重なっていくそれに、誰もが注目し、美しい体捌きで跳ね上がる札に、誰もが魅了された。
いや皆さん何故僕の方を向いてるんですかね。恥ずかしいんだけど。
ギャラリーからは、「早見が本気を出した…」「さすが天才…」「てかあの班早見以外誰も一枚も取ってねぇ…」と言う声が漏れてきている。
最後のは実力の問題だ。僕はもともと100首覚えてるし、場所も全て把握している。その上お前らとは比べものにならないほどの運動神経もある。だったらお前らが僕に勝てる要素ないだろ。
ちなみに僕の班でまだ僕と争う気のある奴は一人だけだ。
名前は…確か東雲 詩乃だったか。クラスメイトと普段関わらないからわかんね。
「早見君、読んでくれたいかな?」
担任に言われた。おそらく僕が無双しすぎたからだろう。いや確定だろ。おそらくである意味はないかな。
まあ、断るのもなんなんで、首を縦に振る。
言ってなかったがもうわかるよな。そう、百人一首である。
100首読まれて100首取る僕はいわゆる最強。
僕が唯一本気を出す競技と言えばわかるだろうか。
来たる二月九日、学年全員での百人一首大会だ。
イベントガチ勢、つまるところの普通科の僕を含む皆さんは、青春を謳歌したいらしく、こうして今日も練習させられているわけだ。
まあ、僕は学年一位になる気満々だからね。
ちなみにこのゲームは現在54首読まれていて、僕は54枚撮っている。なんだ、やはり僕は最強だったのか。
「ながら…
うし。ちゃんと取ったぜ。『ながら』と来れば『うし』!わかったな作者!これお前が覚えてない2首のうちの一つだぞ!(ちゃんと読んでますよ。読みながら取ってるんですよ。)
「みせ…
これは作者も問題なく覚えてるよな。下の句で『ぬ』は一つしかねぇぞ!
皆様は相変わらず僕に魅了されていて、「いやお前が取りすぎだから読み手に回したのになんでとってんだよなんなの馬鹿なの?死ぬの?」的な視線を送ってきている。
お前らちゃんとやってる?と思ったのだが、そんな心配は無用だったようで、次の札ではパシパシと手を叩いていく音が聞こえた。うわー札取った奴痛いし重いしで辛いだろうなー。
「あ…」
僕はすっかり他の事に意識を注いでいて、この札を取るのを忘れていた。
そう、この札は『ちは』である。
某同名の作品とバーロー探偵の力で人気急上昇した札である。まあ、これぐらいは譲ってややってもいいか。本気だそ。
結局僕は、99首で試合を終えたのだった。




