だから、彼は。2
彼が屋上から立ち去ってからも、私はその場から動く事が出来なかった。
ああ、すっかり忘れていた。彼は、早見読は、天才だと言う事を。それ故に、無気力なのだと言う事を。
それを思い出してもあの言葉は腑に落ちない。彼が、あんな事を口にするなんて、思いもしないし今も何故あんな事を言ったのかわからないでいる。
だが、それが彼の足枷になっていると、はっきりとわかった。彼の才能の、足枷になっていると。
結局のところ、私は、彼を知ろうと、分かろうとしていなかったのだ。
気づけば、沖縄旅行ももう終わり。結局早見君のあの言葉が耳から離れず、その後の事はあまり覚えていない。留美ちゃんや羽衣ちゃんは飛行機の中でもずっとはしゃいでいたが、私はどうにもそんな気分になれず一人、窓の外を眺めていた。
早見君は相変わらず本を読んでいる。
その姿はいつも目にしているはずなのに、あの事があってからは、特別なものに見えた。彼が、本に執着する理由を知ってから。
肩を叩かれて顔を上げると、私の目の前に座る月夜ちゃんが、スマホの画面を見せてきた。
『解散後、ちょっとついてきて』
と表示されていた。
***
荷物を手に取り、空港を出る。水上と月夜が一緒に帰ると言う出来事があったが、まあ、さほど不思議な事では無いだろう。
無事に帰宅し、読書にふける。
30分間、なり続けるスマートフォンに気づかずに。
***
「瑞乃ちゃん、頼んだわよ。これは、貴方にしか出来ないの。今、早見読を助けられるのは貴方だけなのよ」
その言葉は、おそらく嘘ではないのだろう。だが、何故、それが出来るのは、私なのだろうか。これが、月夜ちゃんならば、もっと事は上手く運んだはずなのに。あんな事があっても気づかなかった私ではなく、何もなくてもその小さな変化に気づいた如月月夜ならば、もっと簡単に。
あるいは幼馴染として長い時間を共に過ごしてきた羽衣ちゃんなら良かったのに。なんで、私なのだろうか。
本日はちょっと短めです。
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よければ、この『無気力少年のラブコメ的日常』の略称を考えてはもらえないでしょうか。
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