だから、彼は。1
みんなが寝静まった午前2時、私はなかなか寝付けず、ホテルの屋上にでも行こうかと思い、部屋を出る。
夜中という事もあり、廊下は暗がりにひっそりと明かりが置かれている程度だった。薄暗い道を抜け、エレベーターに乗り、最上階を目指す。
かなりお高い高級なホテルであるここは、最上階32階となっていた。ちなみに25階から31階までは未成年立ち入り禁止ですよ。私達の部屋は18階にあります。眺め、めっちゃ良いです。
32階からは階段で上がり、一つ上の階へと足を運ぶと、不意に夜風が吹き抜けた。扉が開いているのだ。
その間を潜り抜けた先には、何事にも無気力に生きる少年こと、早見 読がいた。彼は屋上に設置かれたビーチベッドのような物に寝転んで夜空を見上げていた。そこだけが不自然に、暗い屋上で唯一の光を放っていた。
「水上か。何してんだ?こっち来いよ」
私に気づいたようで、いつもより柔らかい声でそう言った。
彼の言葉通りに、私もベッドに寝転んだ。先程までは暗くてわからかったが、屋上には色々なベッド、椅子が並んでいた。
夜空を見上げると、満点の星空が広がっていた。『化物語』のあの星空にも負けないような、綺麗さで。儚さで。いつか消えるとわかっていても、いるからこそ、全力で光を放とうとしているかのように、鮮やかに煌めいていた。
「俺さ、」
不意に声が聞こえてきた。
「本以外に生きる意味って言うのがわからなかったんだよ」
夜空に輝くあの星達のように、あるいはそれ以上に、消えそうな声が、闇夜に響いた。
「今まで、勉強しても、運動しても、何にも面白くなかった。でも、本だけは、いつも驚きや、笑いや涙をくれた。まあ、そんな自分が大嫌いだったよ」
自分の存在理由をそんな風に語っていく彼からは、全く人間味を感じなかった。
「でもな」
と、彼は語り続ける。私と言う読者に、自分の作品を。
「今の状況、好きなんだ」
先程までとは違う、幸せそうな声でそう言った。
「今の自分は好きだって、はっきり言える」
彼は尚、話し続ける。
「留美も、月夜も、羽衣も、カンナも、佐原も、七峰も、お前も。みんな大切だって思える」
初めて会ってから時間の経っていない奈々美ちゃんがそこに加わっている事が、彼の明確な変化を表していた。
「でも、」
彼はの話は止まらない。
「みんながみんな、ずっとそばにいるわけじゃないだろう?これはいつか、終わる関係だろ?」
そんな事は無いと言いかけた口を抑える。そんな言葉は感情論でしか無い。この場において、この話題において、正しいのは彼なのだ。その彼の声は先程までとは違い、声のトーンは下がっている。それはつまりーー
「俺は、それが怖い」
そういう事なのだろう。
そして今更のながらに気づいた。いつもの彼との、明確な違いに。
「だから、俺はーー
この作品が読の成長を描くラブコメとして書き始めたのを今更ながらに思い出しました。うん、ラブコメってところはずれてるけど読の成長はギリクリアしてるかな。




