文芸部と沖縄旅行。3
美ら海水族館。ジンベイザメの有名なところというイメージ以外に、僕は持っていなかった。
そこに初めて足を運び、まず頭に浮かんだ事は、「めんどくさい」だった。何考えてんだよ僕。いや何よこの人の数。まさしくゴミのようだよ。まあ、この時期に混むのもわかるけども、それにしても混み過ぎだろ。移動も制限されるし、ろくに水槽見れない。ジンベイザメは見えたけどね、大き過ぎて。
こんな感じで水族館から逃げ出して僕は単体、部屋に戻った。
やはり休みの日は一人静かに読書するに限る。制限された五感の中で、視覚と脳に全神経を注ぎ、ひたすらにページを繰る。これ以上に美しいサイクルがあるだろうか。ないね、断言する。
まあ、現在置かれている状況で、それが永遠に続けられるわけないんだけどね。あいつら今こっちに向かってるってライン来たし。関係ないけどね。僕は本読むけどね。最近あんま読んでなかったしね。50冊あるしいいよね。
さてと。あいつらが帰って来る前に風呂にでも入ろうかな。昨日みたく、夕焼け見ながら石で囲われたお湯に浸かるとしようか。いや、サウナで汗流すのもいいな。あれ気持ちいいんだよね。
まあ、そんな事を考えながら、部屋を出る準備をしていると、布団が片付けられた部屋の奥底から物音がした。
「………何やったんだ七峰」
健康的に焼けた肌。ぱっちり二重のくりくりおめめ。そしてボブカット。間違えようがないほどに七峰菜々美だった。
「カメラを仕掛けていた」
他のメンツには心を開いている七峰だが、僕に対しては依然警戒中である。故になんか僕に対しては言葉使いがおかしい。
「お巡りさんこいつです」
「羽衣ちゃんに頼まれたんだよ!」
羽衣、後でお仕置きだ。いや、多分叱るべきは月夜だろう。月夜→羽衣→七峰の流れだろう。
とりあえずは没収。中に入っている怪しげなデータは消去した。僕の隠し撮りばっかだった。多分バックアップ取ってるだろうから問題はあまりないはずだ。
「で、私はどうすればいいのだ?」
と、聞いてきた。まあ、途方にくれる気持ちもわかるがな。羽衣が好き過ぎて色々やってるみたいだしな。そんだけ両想いには価値があるのだろう。僕にはわからないないがな。まあ、僕には何も出来ないし、する必要ないよな。僕には関係のない出来事だしな。こいつらが勝手に付き合ったり結婚したりしてもなんの問題もないわけだしな。いや、問題はあるか、ここ日本だしな。
「と、言うわけで僕は何も出来ないという結論に至る」
「誰もが月夜ちゃんみたいなお前の心を読める前提で話を進めるな」
あら無理なんだ。




