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早見 読はたまに壊れる。

  それはある朝の事だった。

 ドンガンダンドンっ!と、階段から物音がしたのは。

「お兄ちゃーん!!!」


「で、読君がおかしいとは、どういう事なのかしら。説明をしてもらいましょうか」

  現在、この場には私、月夜さん、羽衣ちゃん、瑞乃さんがいる。しばらくの沈黙が流れていたのだが、その中で月夜さんが口を開いた。

「簡単に説明すると、優し過ぎるんです!朝、階段から転び落ちたと思ったらめっちゃいい笑顔で「おはよう、留美。今日も可愛いね」って言ってくるんですよ!?」

「私も言って欲しい……」

 世の中に絶望したかのような表情で、瑞乃さんが言った。気持ちはわからんでもない。あの兄に可愛いって言われるんだよ!?ギャップ萌えとはこの事だ!!

「読が優しいのは案外いつもの事なんだけどね」

 羽衣ちゃんが言った。え、マジで?うちの兄ってそんなに優しいの?身内に厳しいだけなの?私普段怒られてばっかだよ?あ、ちょくちょく心の中でマイラブリーシスター留美とか言ってたね、そういえば。愛されてはいるんだね、私。

「確かに優しさという面では他の男と比べると優れているわね。それ以上に、厳しく、恐ろしい面もあるけれど」

 月夜さんのまともなご意見。将来の姉候補第1位。多分くっつかないけど。そういや月夜さんは一回お兄ちゃんに振られてんだよね。

「例えるなら、『俺好き』のジョーロの草食系の方みたいな感じですね。今のお兄ちゃん、暗黒面が無いんですよ。ギャップとか、えげつないです」

「なるほど…萌えはするけどずっとそのままだと気持ち悪いわね」

 あ、萌えるんだ。この人にも萌えという感情があるんだ。

「読君限定でね」

 この人の心読むのやめて欲しい。多分お兄ちゃんもいつも思ってる。

「取り敢えず読君に会って見たいわね」

おっけい。ちょっと読んできます。


「僕、そんなに力強くないから荷物持ちにほ向かないと思うよ」

  兄登場。荷物持ちとう体で呼び出した。女子陣は速攻でヒソヒソ会議。

「目が、生き生きしてるけど!」

「予想以上にイケメンになってたね!」

羽衣ちゃん、瑞乃さんには大好評だったのだが、

「私はいつもの読君の方がいいわ。適度に死んだ目で、適度な無気力さで生きている方が、ずっと」

 場の空気が凍った。月夜さんのその発言に。月夜さんは哀しげな目でお兄ちゃんを見つめ、羽衣ちゃん、瑞乃さん、私は動かなかった。

「読君、行きましょう」


「ごめん、さすがにもう持てない。というか、死ぬ」

  当たり前だろ、と思う。何キロあんだよってくらいの荷物を、私の兄は今抱えている。女子4人の買い物の荷物持ちとか、死ぬ気でやんないと死ぬからね、ガチで。

  と、言うわけで帰り道。愚兄が持てない分の荷物を分担して抱え、道路を歩いていた。

  とある交差点。そこに野良猫が一匹。よくトラックに轢かれそうになって主人公に助けられてた奴。

  そして、満を持してトラックが来た。まさかーーーやっぱり。早見読は走り出した。いつもなら絶体にしない行動を、平気でするのが今のお兄ちゃん。なら、今この瞬間に起こっている事もきっと本当なんだろう。

「月夜!」

荷物を月夜さんに放り投げ、猫の元へと急ぐ。ただ、呆然と立ち尽くすしかなかった。

キキッー!とブレーキの音が聞こえ、我に帰る。

「お兄ちゃん!」

心の奥底から出たその声は、届いたのだろうか。

「あっぶねー逝くとこだったわ」

平然と戻って来やがった。チッ。全治3ヶ月とかなれば良かったのに。

  ん?なんか違うような………

「ねぇーねぇー今から俺と遊びに行かな〜い?」

ナンパすんな。何?優男の後はチャラ男なの?

  周りを見ると、全員呆れ返ってた。月夜さんまでもが。

「さ、帰りましょうか」

「兄をほって、ね」


 その後、早見読は3回頭を打ち、元に戻ったとさ。

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