無気力少年の気力溢れる部活動
「さて、来月文化祭があることは知っているな?」
再来累は問いかける。
「ここも文化部である以上、なんらかの活動をしなければならない」
そこでだ!と、再来先生が自分の手を机に叩きつけた。おいおい手が赤く腫れ上がってるぞ。自傷行為は他でやってもらえないかな?
「君達4人の短編小説を売ろう!」
「めんどく──」
「売り上げの半分は部費になるぞ?」
「乗った!」
再来先生の被せ気味な提案に、僕は首を縦に振った。
僕がお金に執着するのには理由がある。
僕は、16年程前、しがないサラリーマンの家に生まれた。その2年後、妹が生まれた。普通のサラリーマンの家庭とはいえ、普通に暮らすには十分な程のお金はあった。
しかし、ある時僕は読書にどハマりした。それからというもの、僕はかなりのペースで本を読んでいる。
大昔ほどではないとはいえ、本というのは割と値段が張る。大量に買えば、特に。
昔こそ図書館や学校の図書室で本を借りて済ましていたが、たまに読めなくなっている部分があるのだ。そういう悪書は基本的にすぐに省かれるのだが、しかし蔵書が多くなれば多くなるほど、そのチェックは遅れ、結果的に恨むべき、『読めない』『つまらない』『読む気にならない』の読書界三大『ない』になる。それが嫌なんだよ。だから、大抵の本は自分で買う。しかしそうなればお金が足りない。
だからこそ、全力で稼がねばならない。
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「文化祭に短編4本をまとめた冊子を出す」
赤羽羽衣如月月夜水上瑞乃の三人が部室に集まったところで、僕は簡潔な説明をした。
「なに書けばいいのー?」
まあ、そうなりますよね。羽衣は。
「400字詰原稿用紙10〜30枚分の短編小説だ。ジャンルは自分で決めろ」
「と言われても小説を書いた経験がないから、そう言われても困るわね」
確かにそれは問題点だ。僕自身も小説書いたこと無いし。
「みんなで同じストーリーを書いて、作者毎の違いを楽しんでもらうのはどうでしょうか?」
丁寧な口調で、水上は言った。何故敬語。わてら同級生やで?
「いいねそれ!」
「賛成」
「僕も賛成かな。自分でストーリーを1から作るのはだるいし。」
他の部員全員の賛成を受け、議題は次の場面へと飛躍する。
「そのストーリーは誰が作るのかしら?」
当然湧くであろう疑問を、月夜がぶつけた。
「私が作ります」
水上瑞乃は、はっきりした口調でそう言った。