そして彼女は恋を促進させた。
その日は羽衣と一緒に帰った。カンナは先に帰ったし、月夜は今日は用事で部活を休んだ。
ふと、後ろから視線を感じる。
角を曲がり、最小限の声で羽衣に停止を指示する。
待つ事数秒、そいつは現れた。
ストーカー。一般的にそう呼ばれる存在と見て間違いは無いだろう。
目線を交わし、そいつは逃げた。すぐに追いかける。
フードを被った小柄な人間だった。足が速く、中々捕まえられなかったが、体力が無いのだろう、すぐにスピードが落ち、追いついた。
手を掴んだ瞬間に、フードがふわりと浮き、顔が露わになる。
「…女?」
安定の早見邸。メンツは、僕、留美、カンナ、羽衣、水上、佐原。+勿論メインである先程のストーカーもいる。
「まず名前を」
司会は佐原。拷問が始まった。
「七峰 菜々海っですっ」
涙声でそう話した。ん?七峰?
「何故こんな事したの?」
司会は佐原。拷問は続く。
「私、レズなんです」
緊張が収まったのか、はっきりとそう言った。
にしても随分なカミングアウトだな。
「なるほど…私達には解決出来ない事件だなぁ…」
納得しちゃって良いのか?理由になってないと思うんだが…
「歳は?」「15」「同い年か。趣味は?」「読書」
など、事件とはあまり関係のない事も聞き出す。
「羽衣ちゃんのどこが好きなの?」
司会は水上。拷問は最終局面に差し掛かった。
再び泣き出し、「明るくて、小さくて、可愛い所っ」と答えた。
ちなみに羽衣はぼけーっとしてる。バカだ。バカ過ぎるバカがいる。
最後に俺から。
「好きな本は?」
「『物語』シリーズ」
無罪放免
『物語』シリーズ好きに悪いやつはいない。なので、無罪とする。その法に従い、無罪とした。ちなみに学校同じだった。
何はともあれ、事件は無事解決。もうストーキングしないと約束して、全員に帰ってもらった。
パソコンに通知が来ていたので、開く。
嫁 なんだか女の匂いがして酷く不愉快だわ。
僕 知りません。つーかいつ名前いじった。
嫁と書いてあるが、月夜である。
嫁 私は何も知りませんよ。貴方が知ってるんです、読君。
『物語』シリーズの扇ちゃんのセリフのもじりで返ってきた。
知らないって事は留美か…お仕置きが必要だな。
後日談というか、今回のオチ。
ストーキングをやめた七峰は、その後うちの部活に入り、終始羽衣とイチャイチャしてる。眼p-おっと危ない。そっち方面に行ってしまうところだった。
七峰が入った事により、気づけば部員7人いた。七峰が7人目だった。しょうもないな。すいません。
と、言うわけで、文芸部はめでたく部費を貰える事になったのだった。
『物語』ネタ、使いやす過ぎかよ。




