番外編。文芸部が出来てから。1
2名の部員。
その課題を見事にクリアして迎えた文芸部初日。机と椅子。木で出来た棚。(本棚では無い。正真正銘ただの棚である)
そんな質素な部室で、二人の男女が本を読んでいた。
それについては何も思わないけどね。問題は、
「あのー月夜さん?なんで密着しているのかな?」
これである。何故だか、だだっ広い空間がそこら中にあふれているというのに、月夜は僕に体を押し付けてきていた。二つのほのかに柔らかく、熱を帯びたマシュマロだったり、女子特有の(ただし、可愛い子に限る)いい匂いのする長い黒髪だったりが、僕に延々と触れていた。
「あら、ただのスキンシップじゃない。気にせず読書を続ければ良いのよ」
だそうです。でもね、太ももさわさわされてるのよ。化物語の車のシーンみたいにね。
「パンジーのつぎはガハラさんかよ。めんどくさいキャラばっか狙って来やがる」
「あら、両方とも主人公と両想いね。私達もそうなれると良いのだけれど」
どう言う思考回路したんだよこいつ…ちなみに片方ハーレム狙ってたけどな。もう片方はただのハーレムだけどな。ここハーレムどころか他に部員いないけどな。
ちなみに未来では僕もハーレムもどき築いてるけど。おあいこかな?
「あら、急に立ち上がってどうしたのかしら?」
「トイレに行くだけだよ」
時刻は午後5時。後1時間をどう潰すか。やはり一番の手はトイレだろう。生理現象であり、人類が逆らえない物。
その次に自販機で飲み物を買いに行く事が思いつく。
普通なら友達と話していて遅くなったと言い訳が出来るが、残念ながら僕に友達と呼べる存在はいない。友達が欲しいと思ったのは人生で初めての出来事だった。
潰せたのはたったの15分。
しかしその15分で月夜は読書だけに意識を注ぐ事が出来たようで、その後は何事も無く45分が経ち、完全下校時刻となった。
職員室に鍵を返し、本屋により、帰宅する。
「お帰りお兄ちゃん!遅かったね!」
瑠美がわざわざリビングから出てきてそ
う言った。
「ああ、今日から部活だからな。」
「部員集まったんだ!どんな人?」
「黒髪ロングの美人だ。」
「私とどっちが綺麗?」
「部員」
そう即答すると、雷が落ちたように瑠美は部屋にこもり出した。お兄ちゃん大好きかこの妹は。
夕食は冷めかかっており、相当な時間を瑠美は待っていた事がわかる。
いやまだ午後7時なんだけど。いつもの我が家の夕飯の時刻なんだけど。
とりあえず夕食を温め、食す。可愛い妹の料理だからか、美味い。舌がとろけるというほどではないが、家庭料理としてはかなり上出来なんじゃないだろうか。
風呂に入り、本を読み、気が付けば午前2時。眠りにつき、目が覚めたら朝がやってきている。いつも通りの生活にただ本を読むだけの部活動が増えただけなのに、何故か疲れる。原因はわかりきってるが。
如月月夜。文芸部が存在しているのは彼女のおかげだが、僕の読書の邪魔をする事は許さない。




