番外編。文芸部が出来るまで。2
次の日、図書室に新しい本が入ったそうなので、一度足を運んでみよう思い、昼食を教室で摂り、図書室へ向かった。
いつか読んでみようと思っていた、『僕達のリメイク』があったので、借りて行く事にした。うむ、学校に思いっきりラノベを置いているところはいい学校である。少なくとも僕にとっては。
カウンターにその本を持っていき、カウンターにいたのが、昨日の女性だという事に気がついて、一応会釈した。
「昨日はありがとう。助かったわ」
透き通るような声。か細くも、はっきりと僕の耳に届いた。
「人助けになったんなら何よりだ」
適当に返したのだけなのだが、
「貴方、そんな人じゃないでしょうに」
なんか僕という人間を理解していた。怖い。もしや最近流行りのストーカーか?
「少し調べただけだからそんなに萎縮しなくても大丈夫よ」
「十分怖いわ。普通に怯えるレベルでな」
クスッと笑顔を見せたその人を、心底美しいと思った。もっとも、その気持ちが恋に変わることはないだろうが。
「私は如月月夜よ。月夜と呼びなさい。よろしくね」
ほぼ初対面の男に名前で呼ばせる人はかなり珍しいと思う。まあ、わざわざ月夜以外で呼ぶ理由はないから月夜と呼ぶが。ここで如月と呼んで面倒なことになるのは目に見えているし。
「僕は早見 読だ。こちらこそ、よろしくな」
調べたのなら必要はないと思ったが、一応自己紹介をしておいた。
「両親健在、妹が一人。成績は平均くらい。基本的にずっと本を読んでいる。簡単に私が調べた事を羅列したわ」
さっきのやつはどこから調べがついたのかが全くもって明らかになっていないんだが…
「あら、細かい事を気にする男はモテないわよ」
「心を読むな。『俺を好きなのはお前だけかよ』のパンジーかお前は」
「あら、私をメインヒロインとして扱ってくれるのね」
メインも何もこの時系列の話で出てくるヒロインお前ぐらいなんだが…いや、再来先生と瑠美が出てきたか。
「あれ、そろそろアニメ化しても良いと思うんだよな」
「原作以上に面白くなりそうね。そうね、そろそろ良い頃合いなんじゃないかしら。私、あまりライトノベルは嗜まないからライトノベルのアニメ化についてはあまり詳しくないのだけれど」
あら残念。同類かと思ったんだな。
「それよりも『宵物語』の発売はまだかしら?『続・終物語』もアニメの日程の発表が待ち遠しいわ」
こいつ…作者と同じ事言ってやがる…
「あら、昼休みももう終わりね。もう少しお話したかったのだけれど」
「今まで話の合うやつがいなかったから、僕もそれについては同じだな。もっと語り合いたい気分だ」
「そうね、このお話の続きは放課後、部活動でしましょうか」
その言葉に驚き、たっぷり3秒は思考が停止した。そして頭が働き始める瞬間を見計らったように、月夜は続けた。
「今日貴方と話して決めたわ。私も文芸部に入るわ」
こうして文芸部は、部活動として成立したのだった。
※未来から来ました。作者の時無紅音です。
作中に出てきた『俺を好きなのはお前だけかよ』のアニメ化決定と、『宵物語』はとっくに発売しているのと、『続・終物語』の映画化、そしてアニメでの放送をアナウンスしておきます




