三等星の願い。27
五限と六限、LHRを終え、僕はすっかり通いなれたあの廃工場へと足を運んだ。
「なるほど、君は相当なお人よしなんだね」
「真逆だと思いますけど」
曇天に覆われた空を見上げようと思うほど、僕は空が好きなわけではないので、室内から宇宙さんへ話かける。事の顛末を話終えると、帰ってきたのはそんな的外れな言葉だった。
「よほどのお人好しじゃなきゃ、他人にここまでしないよ」
その意見には同意なのだが、僕にもやらなければならない理由があるのだ。そのために、僕は由崎を文芸部に入部させなければならない。
「まあ、いろいろあるんですよ、僕にも」
あまり褒められたことではないのは分かっているので、言葉を濁しておく。
この人の前でこんなことを言うのは、ただの空気の読めないやつだから。僕は、黙った。
「そういえば、昨日家に帰ったよ」
「妹に会うべきだと思うんですけど」
予想以上に展開が早かった。しかし、由崎にあっていないところを見ると、帰ったのは一瞬で、またすぐに家を出たとみるべきだろう。
「両親と話してきた。やっぱり私は、あの家にはいたくないかな」
そうだ、由崎に親への不満があるなら、今までそれを受け止めてきたこの人にも、それはあるべきなのだ。
「で、一つ約束させてきた」
「何をですか?」
「文香に勉強を強いらないこと」
「それはまた、骨の折れることを……」
由崎から話を少し聞いただけでも分かる。あの両親はかなりヤバイ。何がって、勉強をさせようという意欲が。普通なら、読書くらいはさせてもらえるものだが、それすら許さないくらいには、学校の勉強が大好きな人たちだ。
「大体5時間くらいかけて説得したよ」
距離があるせいでよく見えなかったが、目を凝らすと目元が暗い気がする。ほとんど寝ていないせいでできた、隈だろう。
「ま、私の役目は終わったから、あとは頼んだよ、天才くん」
宇宙さんはそれだけ言うと、糸が切れたように、そのまま眠ってしまった。
最近、前ほど文章の切れがない気がするのでそろそろ更新しなくなるかもしれません




