三等星の願い。10
「月夜ちゃんは何で読くんが好きなの?」
屋上で瑞乃ちゃんと読くんが会話した一件のあと、私はそう聞かれた。
何で、という表現に彼女の才能を感じるばかりだが、しかし私はその質問に答えなかった。いや、答えることができなかった。
私は、どうやら恋愛は感覚的にするタイプのようで、それはすなわち、「誰が」好きかは自覚できても、「どこが」と聞かれればそれは深層心理を呼び出さなければならないほどに微塵も理解していない。瑞乃ちゃんとて、きちんと説明すれば分かってくれるはずだが、しかし私は心のどこかでそれを伝えるのをためらった。もともと自己表現は苦手だからという言い訳も、しようとすれば可能だったが、それを聞く相手が自分しかいないのであればそんなもの必要ないどころか無駄なものに他ならない。
あれからずっと考えていたが、二人が付き合いだしたあたりで私はその思考を諦めてしまった。その答えを出してしまえば、つかめたはずの大切なものを本当に諦められなくなりそうだったから。
私は、彼女に嫉妬していた。その才能に。表現能力に。彼女が持ち、私が持てないすべてに。
彼女が記憶を失ったとき、私は、心の中ではほくそ笑んでいた。これで、最大のライバルは脱落し、ここで慰めていれば彼が私のことを好きになるのではないか、と。そう考えてしまったのだ。
そして、そんな自分が何よりも嫌いだ。何よりも醜いと本当に思う。
今も、本当はこんなことをしても何にもならないと知りながら、適当な理由をつけて、『水上瑞乃が記憶を失った』という事実を、再認識させて、彼女へ向いた彼の好意の矢印を、どうにか消そうとしている。
こればかりは、彼にも理解されないだろう。いつか彼が言った、『分かっても解らない』という言葉が、それを証明している。
何とも、保守的で、あさましい感情だ。ほとほと自分が嫌になる。
それでも、どれだけ自分を嫌っても、一つだけ譲れないものがあった。
私は、早見読が、好きだ。
お久しぶりです。新作作ってたらすっかり忘れてました。
新作の方は毎日投稿しているので、よければ『魔女狩り過激派のせかいで魔女として生き抜きます』を読んでみてください。




